上場準備で失敗する原因とは?審査に落ちる理由や対策を徹底解説
上場準備を進めていても、審査で落ちたり延期を余儀なくされたりする企業は少なくありません。IPOを目指す企業のうち、実際に上場を果たせるのは全体の約2割にとどまるとも言われています。
結論として、上場準備の失敗を防ぐには、内部統制の早期整備と経営体制の段階的な再構築が不可欠です。
本記事では、上場準備の失敗の主な原因、失敗を防ぐための具体的な対策、そして再申請に向けた戦略までを解説します。
上場準備に失敗する主な原因

上場準備に失敗する主な原因は、以下のとおりです。
- 内部統制の不備と制度会計への未対応
- 業績の未達とレピュテーションの低下
原因を正確に把握し、自社の準備状況と照らし合わせて改善に取り組みましょう。
内部統制の不備と制度会計への未対応
上場準備で失敗する原因として最も多く指摘されるのが、内部統制の不備です。近年の審査事例では、社長が独断で意思決定を行っていたケースが報告されています。経営者によって内部統制が無効化されていた事例も確認されています。
2024年度に内部統制の不備を開示した上場企業は58社に達し、過去最多を更新しました。内容別では、不適切会計を含む全社的な内部統制の不備が30社で最多です。決算・財務報告プロセスの不備も24社にのぼり、深刻な課題となっています。
スタートアップの場合、中小企業時代には不要だった上場企業レベルの制度会計が求められます。会計処理のギャップに苦しむ企業は少なくありません。IPO準備の段階から上場後を見据え、業務記述書やリスクコントロールマトリクスの作成に早期着手しましょう。
業績の未達とレピュテーションの低下
IPO支援の実績が長いコンサルティング会社によれば、上場できない企業の最大要因は業績の悪化です。企業成長を担保できない状態にある場合、審査の通過はきわめて困難になります。予算に対して業績が未達の場合、上場後にも下方修正を行う可能性があるとみなされます。
売上高などについて一定以上の乖離が生じた時点で業績予想の修正開示が必要です。予算と実績の差異分析は高い精度で運用しなければなりません。IPO準備中に市場競争の激化や需要の減少で業績が悪化すると、上場自体を妨げる要因にもなります。
さらに注意が必要なのが、レピュテーション(企業の評判や信頼度)の低下です。不正行為の発覚や製品の品質問題が原因でレピュテーションは下落します。SNSにより情報が高速に拡散する現代では、一度失われた信頼の回復に多大な時間がかかります。日常的なリスク管理を怠らない姿勢が求められるでしょう。
上場を失敗させないための具体的な対策

上場を失敗させないための具体的な対策は、以下のとおりです。
- 経営トップからの段階的な権限委譲
- 業務フローと意思決定プロセスの明確化
- 上場基準の把握と専門人材の確保
- 反社チェックを含むコンプライアンス体制の構築
自社の状況に合わせて優先度を判断し、計画的に対策を進めていきましょう。
経営トップからの段階的な権限委譲
上場を目指す企業は、社長や一部の役員に決裁権限が集中する状態を解消する必要があります。組織的な意思決定体制の構築が上場審査では求められます。ベンチャーやスタートアップでは創業者の即断即決が強みになる一方で、権限の適切な分散が審査の要件です。
上場準備前の企業では、権限の多くが社長に集中しているのが通常です。準備が進むにつれ、社長から取締役や管理職へ権限が委譲されていきます。職務権限表が整備され、誰がどの範囲で決裁するかが明確になります。IPOを検討する段階では、COOやCFOに業務コントロールを委ねる体制が不可欠です。
ただし、内部統制を急激に進めると経営者の行動が制限され、業績が下がるおそれがあります。権限を委譲しすぎると、経営陣の監督の目が届きにくくなり、ガバナンスが低下するリスクも生じます。自社の実情に合わせたバランスのとれた設計を段階的に進めていきましょう。
業務フローと意思決定プロセスの明確化
監査法人や証券会社の調査では、業務フローや意思決定の過程に問題があれば指摘を受けます。スムーズに監査を通過するには、各フローや意思決定の明確化が欠かせません。会計処理がどのように行われて書類に計上されるのか、チェック過程を可視化する体制が必要です。
業務フローを見直す際は、従業員ごとに認識の齟齬が生じないよう各プロセスを明文化しましょう。管理者がどのような判断基準で意思決定を行っているかも明確にしなければなりません。予算と実績の差異分析は高い精度での運用が求められ、予算作成プロセスの合理性も審査対象です。
業務フローの明確化は内部統制の強化にも直結します。上場後に求められる適時開示体制の基盤にもなるでしょう。ヒューマンエラーを最小限に抑え、不祥事の芽を早期に摘む効果も期待できます。
上場基準の把握と専門人材の確保
上場審査に落ちる理由の一つが、東京証券取引所の実質審査基準を把握できていない点です。形式要件をクリアしていても、実質審査で求められるガバナンス水準を満たせなければ通過できません。
IPOを支援する主幹事証券の助言が必ずしも十分でない場合があります。東証の審査スタンスとのずれが生じているとの指摘もあります。経営者自身が上場企業としての実質的な経営能力を身につけなければ、準備段階で形を整えるだけでは不十分です。
上場準備を取りまとめられる人材の確保も、失敗を防ぐために欠かせません。IPOを検討する段階でCFO人材を確保できていない企業は多い傾向にあります。育成プログラムや外部コンサルティングの活用を含めた対策が必要でしょう。
反社チェックを含むコンプライアンス体制の構築
上場審査では、反社会的勢力との関係がないだけでは足りません。継続的に関係を持たないための組織的な仕組みが構築されているかも確認されます。上場申請の際には、反社との関係がない旨を示す確認書の提出が求められます。
経営トップ自らが率先して反社排除に取り組む姿勢を示す必要があります。全社的に関係遮断の認識を統一させる企業風土の醸成も不可欠です。反社チェックのタイミングは、新規取引開始時や採用時、株主の変動時などが代表的です。最低でも年1回の定期チェック実施が推奨されています。
企業規模が急激に大きくなるIPO準備企業こそ、早い段階から反社チェックを組み込みましょう。労務管理や情報管理を含む包括的なコンプライアンス体制も同時に整備する必要があります。体制が不十分だと、審査過程で想定外の指摘を受けるリスクが高まるでしょう。
上場できなかった会社の再申請のための戦略とは?

上場に失敗した場合でも、原因を特定して改善すれば再びIPOに挑戦できます。一度は上場を断念した企業が、準備を整えて見事に新規上場を果たした事例はいくつもあります。AnyMind Groupは2022年に2度のIPO中止を経験しながら、2023年3月に上場を達成しました。
再申請で最も重要なのは、前回の失敗原因を徹底的に分析する姿勢です。指摘事項に対する改善策を実行し、運用実績を積み上げなければなりません。モバイルファクトリーはライブドア事件やリーマンショックで2度の上場失敗を経験しています。市場の再開拓やマーケティング戦略の再構築を通じて、最終的に上場を実現しました。
近年ではTOKYO PRO Marketに先行上場してから一般市場を目指す戦略も増えています。主幹事証券や監査法人と密に連携しながら、業績の安定確保と管理体制の運用を両立させましょう。再申請の最適なタイミングを見極めていく姿勢が大切です。
まとめ
上場準備における失敗は、内部統制の不備や業績未達など複数の要因が絡み合って発生します。IPOを目指す企業の約8割が上場を果たせないという現実は、準備の難易度の高さを物語っています。
失敗を防ぐには、経営トップからの段階的な権限委譲と業務フローの明確化を軸に対策を進めましょう。上場基準を正しく理解したうえで専門人材を確保し、コンプライアンス体制も早期に整備する必要があります。たとえ一度失敗しても、原因を分析して改善策を実行すれば再挑戦は十分に可能です。
上場はゴールではなく、さらなる成長への出発点だという意識を持ちましょう。形式的な体裁を整えるだけでなく、上場企業としての経営力を身につけていく姿勢が求められます。
監修者
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甲田拓也 (公認会計士税理士甲田拓也事務所 代表)
早稲田大学卒業後、PwCグローバルファームや個人会計事務所を経て現事務所を設立。節税、資金繰り、IPO・マーケ支援を行うプロ会計士として活動。YouTubeでも情報発信中! |





