決算前でも間に合う法人の節税対策!利益が出過ぎたときの駆け込み経費と注意点
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決算月が近づいた試算表を見て、多額の法人税を前に頭を抱える経営者は多いのではないでしょうか。決算直前であっても要件さえ押さえれば、当期の損金算入に間に合う節税策は数多く残されています。
本記事では、決算直前から動ける即効策から、早めに準備したい中長期の対策、実行時の注意点まで幅広く解説します。
- なぜ決算前に経費を使うのか?節税の基本とメリット
- 利益を圧縮して法人税等の税負担が軽くなるから
- 将来必要な投資を適切な時期に実行できるから
- 【決算直前でも要件次第で可能】今すぐ実践できる即効性の高い節税対策7選
- 40万円未満の設備・備品を購入する(少額減価償却資産の特例)
- 従業員への決算賞与の支給
- 短期前払費用の特例を活用した「費用の前払い」
- 未払費用(未払金)の適切な計上
- 不要な在庫(棚卸資産)の処分・評価損の計上
- 不要な固定資産の売却・除却
- 広告施策を決算日までに実施する(HP改修やパンフレット作成)
- 【早めの準備が重要】中長期で高い効果を発揮する節税・投資対策5選
- 経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)への加入・増額
- 社宅制度(借上社宅)の導入
- 中退共(中小企業退職金共済)や企業型確定拠出年金の導入
- 回収見込みのない債権の貸倒損失処理
- 赤字(繰越欠損金)の繰り越しと活用
- 必要な投資を適切な時期に実行し、税負担と資金繰りのバランスを整えよう
- 監修者
なぜ決算前に経費を使うのか?節税の基本とメリット

ここでは、決算前に経費を使う理由と、節税で得られるメリットを整理します。大きく分けると、以下の2つです。
- 費用の計上漏れや利用できる税制を確認して税負担を適正化すること
- 将来必要となる支出を適切な時期に実行して事業基盤を強化すること
ただし、経費を使えば、一般的には節税できる金額以上に会社の現金が減る点に注意が必要です。
利益を圧縮して法人税等の税負担が軽くなるから
決算前に経費を計上する最大のねらいは、利益を圧縮して法人税などの負担を軽くする点にあります。法人税は、会計上の利益に税務上の加算・減算を行って算出した課税所得へ、所定の税率をかけて計算します。
そのため、適正な損金を計上して課税所得を抑えれば、法人税や所得に連動する地方税の負担を軽減できます。ただし、法人住民税の均等割など、利益が減っても原則として負担が変わらない税金もあります。
修繕費や広告費、消耗品費など、年度内に計上できる費用を漏れなく拾う姿勢が第一歩になります。適用できる優遇税制があっても、税務署から個別に案内されるとは限らないため、経営者側の準備が節税の成否を分けるといえるでしょう。
決算月には最新の利益見込みを確認し、費用の計上漏れや適用できる税制がないかを点検しましょう。
将来必要な投資を適切な時期に実行できるから
決算前の節税では、近い将来必要になる設備や広告、人材への支出を適切な時期に実行することで、事業の成長と税負担の軽減を両立できる場合があります。
ただし、経費を使えば、節税できる金額以上に会社の現金が減るのが一般的です。また、設備やソフトウェアは資産計上が必要となり、購入額の全額を当期の損金にできないこともあります。節税額だけでなく、投資によって将来どの程度の収益や業務改善が見込めるかを基準に判断しましょう。
【決算直前でも要件次第で可能】今すぐ実践できる即効性の高い節税対策7選

決算まで残りわずかでも、要件さえ押さえれば当期の損金へ間に合う施策は数多く存在します。ここでは、即効性の高い節税対策について見ていきましょう。
- 40万円未満の設備・備品を購入する(少額減価償却資産の特例)
- 従業員への決算賞与の支給
- 短期前払費用の特例を活用した「費用の前払い」
- 未払費用(未払金)の適切な計上
- 不要な在庫(棚卸資産)の処分・評価損の計上
- 不要な固定資産の売却・除却
- 広告施策を決算日までに実施する(HP改修やパンフレット作成)
40万円未満の設備・備品を購入する(少額減価償却資産の特例)
青色申告書を提出する一定の中小企業者等は、2026年4月1日以後に取得等をした取得価額40万円未満の減価償却資産について、年間合計300万円を限度として、事業の用に供した事業年度に全額を損金へ算入できます。令和8年度税制改正により、1資産当たりの取得価額要件が30万円未満から40万円未満へ引き上げられ、適用期限も2029年3月31日まで延長されました。
適用を受けるには、取得価額相当額を損金経理し、確定申告書に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付する必要があります。
決算前の設備更新にも活用できますが、単に購入しただけでは適用できず、原則として事業の用に供することが必要です。また、特例を利用して全額損金算入した有形資産でも、固定資産税(償却資産)の申告対象になる場合があります。資産が所在する市区町村ごとの課税標準額の合計が150万円未満であれば課税されませんが、申告義務までなくなるとは限りません。節税だけを目的に不要な物品を購入することは避けましょう。
従業員への決算賞与の支給
決算賞与は、実際の支払いが翌期にずれ込んでも、一定の要件を満たせば当期の損金へ算入できます。具体的には、決算日までに同時期に支給を受けるすべての従業員へ各人別の支給額を通知し、事業年度終了日の翌日から1か月以内に通知した金額を全額支払い、その支給額を当期に損金経理することが必要です。
一部の従業員へ期限内に支払わなかった場合や、通知した金額と実際の支給額が異なる場合は、当期の損金算入が認められない可能性があります。通知書や振込記録などを保存しましょう。
短期前払費用の特例を活用した「費用の前払い」
家賃や保険料など、一定の契約に基づいて継続的に提供される役務の対価を前払いした場合、支払日から1年以内に役務提供を受ける部分については、短期前払費用として支払った事業年度に損金算入できる場合があります。
ただし、決算日までの実際の支払いと、毎期継続した処理が必要です。契約内容や費用の性質によっては適用できないため、事前に税理士へ確認しましょう。
未払費用(未払金)の適切な計上
給与や外注費、専門家報酬など、支払義務が成立し、役務提供が完了しており、金額を合理的に算定できる費用は、未払いでも当期に計上できる場合があります。社会保険料や税金については債務が確定する時期がそれぞれ異なるため、個別に確認が必要です。
不要な在庫(棚卸資産)の処分・評価損の計上
販売できない不良在庫を実際に廃棄すれば、その帳簿価額と売却価額との差額を損金へ反映できる場合があります。また、破損や著しい陳腐化など税務上の要件を満たす場合は、評価損を計上できることがあります。
ただし、単に売れ行きが悪い、仕入れ過ぎた、販売価格が下がったという理由だけでは、原則として評価損は認められません。廃棄前後の写真、廃棄業者の証明書、社内決裁書などを保存しましょう。
不要な固定資産の売却・除却
不要な固定資産を廃棄した場合は、帳簿価額から処分価額などを差し引いた金額を除却損として計上できる場合があります。売却した場合は、売却額と帳簿価額との差額に応じて売却損または売却益が発生します。現物の廃棄や売却の事実を示す写真、契約書、領収書、廃棄証明書などを保存しましょう。
広告施策を決算日までに実施する(HP改修やパンフレット作成)
広告掲載やホームページ改修などの役務提供が決算日までに完了していれば、当期の広告宣伝費等として損金算入できる場合があります。ただし、発注や代金の支払いだけでは、原則として当期の費用になりません。
パンフレットなどの広告宣伝用印刷物は、原則として使用した事業年度の損金になります。ただし、毎期おおむね一定数量を取得して経常的に使用し、継続して取得時に損金処理している場合は、取得した事業年度の費用として認められることがあります。決算前に一度だけ大量発注し、未使用分が残る場合は、貯蔵品として資産計上が必要になる可能性があります。
また、ホームページに検索、予約、データベースなどのシステム機能が含まれる場合は、ソフトウェアとして資産計上が必要になることがあります。
【早めの準備が重要】中長期で高い効果を発揮する節税・投資対策5選

制度によっては、検討から導入までに数か月以上かかることがあります。早い段階から準備すれば、決算直前では間に合わない福利厚生制度やリスク対策も選択肢に加えられます。
ここでは、中長期で効果が見込める節税対策を見ていきましょう。
- 経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)への加入・増額
- 社宅制度(借上社宅)の導入
- 中退共(中小企業退職金共済)や企業型確定拠出年金の導入
- 回収見込みのない債権の貸倒損失処理
- 赤字(繰越欠損金)の繰り越しと活用
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)への加入・増額
経営セーフティ共済は、法人が支払った掛金を損金へ算入できる制度です。掛金は月額5,000円から20万円まで選択でき、手続きと支払いが決算日までに完了すれば、1年以内の前納掛金を当期の損金へ算入できる場合があります。
掛金納付月数が40か月以上であれば、自己都合による任意解約でも、原則として掛金総額と同額の解約手当金を受け取れます。ただし、法人が受け取った解約手当金は益金となります。
また、2024年10月1日以後に解約して再加入した場合、解約日から2年を経過するまでに支払う再加入後の掛金は損金算入できません。短期の解約と再加入を繰り返す方法は利用しにくくなっています。
社宅制度(借上社宅)の導入
借上社宅では、会社が支払う家賃を損金へ計上し、役員や従業員から一定の社宅使用料を受け取ります。税務上の賃貸料相当額を基準に適切な使用料を設定すれば、給与課税を避けられる場合があります。ただし、役員と従業員では計算方法が異なり、社会保険でも別の現物給与評価が行われるため、税理士や社会保険労務士への確認が必要です。
中退共(中小企業退職金共済)や企業型確定拠出年金の導入
中退共は従業員の退職金を外部で積み立てる制度で、会社が負担する掛金は全額を損金へ算入できます。通常の掛金は従業員1人当たり月額5,000円から3万円で、一定の短時間労働者には月額2,000円から4,000円の特例掛金も用意されています。
一定の要件を満たして新たに加入する事業主は、加入後4か月目から1年間、従業員1人当たり月額5,000円を上限として、掛金月額の2分の1の助成を受けられます。
企業型確定拠出年金も、会社が拠出する掛金を損金へ計上でき、退職金準備と税負担の軽減を両立できます。加入対象は、原則として企業型年金規約で定める資格を満たした厚生年金被保険者です。
規約によって一定の職種、勤続期間、年齢などの加入資格を設けられる場合もありますが、従業員を自由に対象外にできるわけではありません。非加入者に対して、企業型DCに加入した場合と相当する代替措置が必要になることもあります。
導入には労使合意や規約の作成・承認などが必要になるため、決算直前の対策ではなく、早い段階から検討しましょう。
回収見込みのない債権の貸倒損失処理
回収の見込みが立たない売掛金などは、要件を満たせば貸倒損失として損金へ算入できます。税法は貸倒れを認める状態を厳密に定めており、取引先の倒産や債権放棄など事由ごとの区分があります。また、中小法人等の適用対象法人では、一定の要件を満たす金銭債権について、個別評価による貸倒引当金の繰り入れが認められる場合があります。
税務上の要件を確認し、督促履歴、相手先の財務状況、債権放棄通知書などの証拠を保存しましょう。
赤字(繰越欠損金)の繰り越しと活用
青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金は、一定の要件を満たせば最大10年間繰り越せます。翌期以降に利益が出た場合、課税所得から繰越欠損金を控除することで、法人税負担を軽減できる仕組みです。
中小法人等は、原則として繰越控除前の所得金額の全額まで控除できます。一方、中小法人等に該当しない法人は、原則として所得金額の50%が控除上限です。
適用には、欠損金が生じた事業年度に青色申告書を提出し、その後も確定申告書を連続して提出することなどが必要です。利益の変動が大きい会社ほど、繰越残高と期限を継続的に管理しましょう。
必要な投資を適切な時期に実行し、税負担と資金繰りのバランスを整えよう

決算前の節税は、利益の圧縮と将来投資、そしてリスク管理のバランスで組み立てる作業です。即効性のある経費計上から中長期の制度活用まで、自社の状況に合う打ち手を優先度順に選びましょう。行き過ぎた手法は重いペナルティを招くため、あくまで事業の実態に沿った範囲で進める姿勢が欠かせません。
最新の試算表で利益を把握し、早めに顧問税理士へ相談すれば、選べる選択肢は大きく広がります。節税と資金繰りの両立をめざし、税負担と資金繰りのバランスを整えましょう。
監修者
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甲田拓也 (公認会計士税理士甲田拓也事務所 代表)
早稲田大学卒業後、PwCグローバルファームや個人会計事務所を経て現事務所を設立。節税、資金繰り、IPO・マーケ支援を行うプロ会計士として活動。YouTubeでも情報発信中! |




