中小企業が使える資金調達方法は?選び方と必要な準備を解説
, 個人事業主
中小企業が利用できる資金調達手段は複数あるため、最適な方法を選び計画的に進めることが重要です。種類ごとの特徴や準備に必要なことを知っておけば、検討作業を進めやすくなるでしょう。資金調達方法の選び方やスムーズに進めるコツを紹介します。
サイト管理者の紹介
甲田拓也 (公認会計士税理士甲田拓也事務所 代表) 早稲田大学卒業後、PwCグローバルファームや個人会計事務所を経て現事務所を設立。節税、資金繰り、IPO・マーケ支援を行うプロ会計士として活動。YouTubeでも情報発信中! |
中小企業が使える資金調達方法
資金調達の手段は、以下に挙げる3種類に大別できます。自社に合った方法を効率よく探すために、まずは大まかな分類を確認しておきましょう。
資産の現金化「アセットファイナンス」
自社が保有する資産を現金化する調達方法が『アセットファイナンス』です。現金化できる資産は、固定資産・流動資産・繰延資産に分けられます。
固定資産の代表例が土地です。売却だけでなく、更地の状態で賃貸したり貸しビルを建設したりすることでも、現金を作れます。
流動資産を現金化する主な方法は、売掛金の早期回収や棚卸資産の早期売却です。社長や役員への貸付金・仮払金を回収する方法もあります。
アセットファイナンスによる資金調達は、現金化のコストを抑えられる点がメリットです。ただし、資産自体が信用に足るものでなければ、十分な現金は得られないでしょう。
銀行からの融資など「デットファイナンス」
『デットファイナンス』とは、負債による資金調達方法です。銀行などの民間金融機関や日本政策金融公庫からの融資が該当します。社債やコマーシャルペーパーによる資金調達も、デットファイナンスの代表例です。
デットファイナンスで調達した資金は借金になるため、将来的な返済義務が発生します。多くの場合、利息を付けて返済する『有利子負債』になる点もポイントです。
借入先にはさまざまな種類があるものの、会社の信用力が低ければ利用可能な借入先は限定されます。中小企業が利用しやすい主な借入方法は、日本政策金融公庫からの融資や、信用保証を付けて借入できる制度融資です。
返済の必要のない「エクイティファイナンス」
主に自社の新株を発行して増資する方法が『エクイティファイナンス』です。法人に特化した資金調達方法といえます。
デットファイナンスと異なり、エクイティファイナンスで調達した資金には返済義務がありません。会社が倒産しても返済せずに済みます。
増資により自己資本比率を高められるため、信用力が上がり融資の審査も通りやすくなるでしょう。株主への配当金も義務ではなく、十分な利益が出た際のみの対応で構いません。
ただし、持ち株比率が高い株主がいる場合、経営に口出しされる可能性があります。新株発行数が多くなると1株の価値が下がるため、既存株主を納得させる説明も必要です。
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創業前後におすすめの資金調達方法
法人設立前後は、設備投資や運転資金などに充てる開業資金の準備が必要です。創業前後の中小企業でも利用しやすい、おすすめの資金調達手段を紹介します。
日本政策金融公庫の融資
法人設立前後に資金調達しやすい方法としては、日本政策金融公庫からの融資が挙げられます。日本政策金融公庫とは、政府が全額出資して運営する公的金融機関です。
中小企業をサポートするための機関であり、創業して間もないケースでも融資を受けやすいでしょう。担保・保証人が不要な点や、融資実行までの時間が短い点もメリットです。
民間金融機関と比べ金利が低く、固定金利であるため原則として金利の変動もありません。経営に役立つアドバイスを受けたり、ビジネスパートナーを紹介されたりするなど、支援サービスを受けられるのも特徴です。
創業補助金
中小企業の開業資金準備には、『助成金』や『補助金』の利用もおすすめです。創業前後の企業を対象に、国や自治体がさまざまな創業支援事業を実施しています。
ただし、制度の名称や内容は実施母体により異なります。毎年名称が変更されたり、制度が打ち切りになったりしているものもあるため、制度を探す際は注意が必要です。
2021年度に実施されている事業の一つに、横浜市の『創業促進助成金』があります。横浜市内で創業予定の人を対象に、開業資金の一部を最大20万円まで助成する制度です。
申請する際は、事前に指定のセミナーを受講しておく必要があります。ほかにもいくつかの受給条件が設定されているため、申請前にきちんと確認しましょう。
小規模事業者持続化補助金
中小企業などの事業継続や感染症拡大防止対策をサポートする補助金制度が『小規模事業者持続化補助金』です。国が実施し、全国商工会連合会が管理・運営しています。
補助対象者となるのは、常勤従業員数が5人以下または20人以下の小規模事業者です。従業員数の上限は業種ごとに異なります。
補助上限額は100万円、補助率は3/4です。電子申請システム『Jグランツ』を利用した申請のみのため、利用方法を確認しておく必要があります。
22年3月まで、2カ月ごとに受付の締め切りが設けられています。助成金と異なり、補助金は申請が間に合わなければ受付してもらえないため、時間に余裕を持って申請しましょう。
令和2年度第3次補正予算 小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>
その他の資金調達手段
中小企業が利用可能な資金調達方法には、クラウドファンディング・民間金融機関からの融資・ファクタリングもあります。それぞれの特徴やメリットについて解説します。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネットを利用して広く世間に資金提供を求め、事業内容などに共感を得た人から出資を受けられる資金調達方法です。
大きな賛同を得られればお金を集められるため、新しい資金調達の手段として近年注目を集めています。創業資金を集めたい中小企業でも利用可能です。
クラウドファンディングの種類は『購入型』『寄付型』『金融型』の3種類に大きく分けられます。購入型と金融型では、出資者へのリターンを設定しなければなりません。
金融型には、さらに『貸付型』『株式型』『投資型』などの種類があります。資金の受け取り方によって、利息や配当金を出資者へ返す必要が生じます。
民間金融機関からの借入
中小企業が利用できる資金調達手段には、銀行や信用金庫など民間金融機関からの借入もあります。ただし、銀行からの借入は難易度が高めです。
銀行融資には『保証付き融資』と『プロパー融資』があり、信用保証協会の保証がないプロパー融資は、創業前後に申し込んでも審査には通らないのが一般的です。多くの場合、制度融資を利用し保証を付けて融資を受けることになります。
地方銀行や信用金庫なら、都市銀行に比べ小口の融資を受けやすいでしょう。金利や融資額の面では都市銀行にメリットがあるため、日本政策金融公庫や信用金庫からの融資で実績を積んでからチャレンジするのがおすすめです。
ファクタリング
売掛金を売却して資金調達する方法が『ファクタリング』です。資産を現金化するアセットファイナンスの一種となります。
ファクタリングで資金調達する際は、売掛債権をファクタリング業者へ売却し、売掛金から手数料を引いた分を業者から受け取ります。
一般的に、売掛金は翌月や翌々月にしか入金されません。売掛金を早期回収し、足りない現金の補充に回せることが、ファクタリングのメリットです。
売掛債権を買い取ってもらう以外に、売掛債権に保険をかけることも可能です。取引先の信用度が低く、確実な回収を見込めない場合に役立ちます。
資金調達の準備
資金調達を行う前の段階では、調達する目的や金額を決め、事業計画書を作成する必要があります。以下に挙げるそれぞれのポイントを押さえておきましょう。
目的と必要な金額を決める
資金調達を行う際に集める資金には、『短期資金』と『長期資金』の2種類があります。返済期間が1年未満である資金が短期資金、1年以上の資金が長期資金です。
特定の時期にお金を必要とするケースでは、主に短期資金を調達します。長期資金は、設備資金や運転資金など、会社経営の費用をまかなうための資金に該当するのが一般的です。
長期資金は返済期間に余裕が持てる一方、利息は高くなります。ただし、利息を抑えるために短期資金で借入を行うと、回収が間に合わず返済できなくなる可能性がある点に注意が必要です。
資金調達の準備では、必要な金額も決めなければなりません。創業前後で数百万円の資金で足りる場合は、クラウドファンディングや日本政策金融公庫の利用がおすすめです。
事業計画書の作成
一般的に、金融機関へ融資を申し込んだり助成金・補助金の申請を行ったりする際は、事業計画書の提出を求められます。事業計画書とは、事業の内容や進め方をまとめた書類です。
資金調達の際に作成する事業計画書には、収益の見込みや返済についても明記しなければなりません。お金の使い道や返済方法を明確に示せなければ、金銭面での援助を受けることは困難です。
例えば、金融機関の融資担当者が事業計画書を読んだ際に、融資しても問題ないと思える内容にする必要があります。資金調達の種類によりアピールポイントは異なるため、調達先に合わせて内容を工夫することが大事です。
資金調達方法の選び方
資金調達の手段を選ぶ際は、着金までの期間と返済義務の有無をチェックしましょう。それぞれについて詳しく解説します。
着金までにかかる期間
資金調達方法を選ぶ際は、実際に資金を入手できるまでの期間をチェックしましょう。着金までの期間は方法ごとに異なるため、着金が遅い方法を選ぶと資金繰りに困る事態にもなりかねません。
すぐに資金を用意したい場合は、ファクタリングやビジネスローンがおすすめです。着金が1~2カ月先でも構わないなら、日本政策金融公庫でもよいでしょう。
一般的に、早く調達できる方法は手数料などのコストも高くなります。資金の緊急性を考慮し、できるだけコストを抑えられる方法を選ぶのがポイントです。
返済義務はあるか
調達する資金における返済義務の有無は、調達方法を選ぶ際に重視すべきポイントの一つです。
エクイティファイナンスで調達した資金や助成金・補助金には、返済義務がありません。一方、デットファイナンスで得た資金には返済義務が発生します。
返済義務がある場合は、利息がかかる点にも注意が必要です。借りた分だけ返せばいいわけではないため、きちんと返済計画を立てた上で調達する必要があるでしょう。
借入の際に代表者保証を付ける場合、基本的には金利を下げられます。ただし、会社が倒産した場合は、代表者個人が弁済責任を負わなければなりません。
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資金調達に迷ったら専門家に相談
資金調達にはさまざまな種類があるため、自社に適した方法を判断できない場合も多いでしょう。資金調達に詳しい専門家のサポートを受けて行うのがおすすめです。
資金調達の相談ができる専門家とは
資金調達に関する知識が豊富な専門家としては、税理士や公認会計士が挙げられます。助成金や補助金なら社会保険労務士の専門です。
ただし、それぞれに細かい専門分野があるため、全ての資金調達方法に精通しているとは限りません。専門家ごとに得意とする分野も違います。
専門家選びに失敗すると無駄な時間を費やしてしまい、さらに資金繰りを悪化させてしまうことにもなりかねません。選び方を知って慎重に探すことをおすすめします。
専門家に頼るメリット
資金調達を専門家に依頼すれば、的確なアドバイスをもらえます。事業計画書の作成もサポートしてくれるため、資金調達の成功率をより高められるでしょう。
着金までの期間を短縮できる点も魅力です。自力で資金調達を試みた場合、リサーチや書類作成にどうしても時間がかかりますが、専門家を頼れば作業がスムーズに進みます。
金利が安くなるなど、有利な条件を引き出せる可能性があることも、専門家に依頼するメリットの一つです。融資を受けるための面談にも同行してくれる場合は、担当者とも対等にやり取りできます。
信頼できる専門家の探し方
『経営革新等支援機関』に認定されている税理士や会計士なら、中小企業支援に関する専門知識や実務経験が一定レベル以上あると判断できます。専門家選びの際に役立つ指標の一つです。
資金調達の実績が十分かどうかをチェックすることも大切です。過去の取扱事例集や月間の取扱件数、専門スタッフの人数などをホームページで確認できます。
着手金や手数料、顧問契約の有無は、コストに関わる大事なポイントです。費用がかかり過ぎると本末転倒になりかねないため、適正範囲のコストに収まる専門家を選びましょう。
候補が絞られた後は、専門家の人柄や信頼度で最終判断するのもおすすめです。支援を依頼したいと心から思える人を頼りましょう。
まとめ
中小企業に適した資金調達手段としては、日本政策金融公庫や創業支援系の補助金などが挙げられます。クラウドファンディングやファクタリングもおすすめです。
資金調達を行う際は、目的と必要金額を決めた上で、魅力的な事業計画書を作成する必要があります。自力での作業が難しいと感じるなら、専門家のサポートを受けることも検討しましょう。
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