電子帳簿保存法とは?売上5,000万円以下の企業が対応するべき義務の内容を解説

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電子帳簿保存法とは?売上5,000万円以下の企業が対応するべき義務の内容を解説

2022年1月に施行された電子帳簿保存法の改正によって、見積もり書や領収書などの電子取引は電子取引データでの保存が義務になりました。インボイス制度も含めて書類の保管に関する法律が大きく変わっており、どうやって書類を保管すれば良いのか迷ってしまっている方も多いのではないでしょうか?

 

しかし、売り上げが5,000万円以下の会社であれば簡単な対応で済む措置もあり、必ずしも悲観する必要はありません。

 

本記事では電子帳簿保存法の改正の概要や、売上5,000万円以下の会社で最低限対応するべき対応について解説します。

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法は、国税関係書類(決算関係書類・取引関係書類など税金に関する帳簿・書類)の保存方法について、一定条件を満たすことで電子データとしての保存が可能になる法律のことです。

 

初めて法律ができたのは1998年のことですが、時代に合うように何度も改正が重ねられています。2022年1月の改正では電子取引データの電子保存の義務化が盛り込まれたことで、法人や個人事業主の取引データ保存業務に大きな影響を与えることになりました。

 

電子データ帳簿保存には以下の3つの区分がありますが、義務化されているのは③の「電子データ保存」のみです。

 

  1. 電子帳簿等保存:パソコンで作成した仕訳帳や総勘定元帳などの帳簿をデータとして保存できる区分
  2. スキャナ保存:紙で受け取った領収書や請求書などをスキャンして電子保存できる区分
  3. 電子取引データ保存:メールなどでデータとしてやりとりした領収書や請求書などについて、電子データのままで保存することが義務付けられた区分

 

電子帳簿保存法の2022年1月の改正内容

電子帳簿保存法はその時代に合わせて何度も改正が行われていますが、特に大きな改正だったのが2022年の改正です。

 

2022年の改正では制度のさまざまな部分が改正されましたが、特に大きな変更点は以下のとおりです。

 

  • 事前承認制度の廃止
  • 電子取引の電子データでの保存が義務化
  • 罰則規定の強化

 

2022年より前は取引データを電子保存したりスキャナ保存したりする場合、事前に税務署長に届け出をする必要がありました。2022年からはこの事前承認が不要になり、好きなタイミングで電子帳簿保存やスキャナ保存ができるようになりました。

 

また2022年の改正ではこれまで紙の保存が認められていた「電子取引で授受した領収書や請求書など」について、原則としてすべて電子データで保存することが義務付けられました。

 

罰則規定も強化されており、ルールを故意に破ると青色申告承認の取り消しや、電子データの改ざん・隠ぺいが発覚した際の重加算税に10%課税されます。

 

電子帳簿保存法の対象事業者

電子帳簿保存法の対象になるのは、法人税・所得税を納めているすべての法人事業主・個人事業主です。企業の規模は問わないため、1人だけでビジネスをしている個人事業主も電子帳簿保存法のルールを守る必要があります。

 

帳簿・書類をすべて紙で保存していて電子データを取り扱っていない法人・個人事業主は対象外ですが、いまの時代に紙だけで取引をまとめている事業者はごく少数しかいないでしょう。

 

自分でビジネスをしている方はほぼすべて電子帳簿保存法の対象と思っておきましょう。

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売上高5,000万円以下の企業が電子帳簿保存方で対応すべきこと

ここからは、売上高5,000万円以下の企業が、電子帳簿保存法に関して守るべき最低限のルールについて解説します。

 

①原則に従った電子取引データのデータ保存

電子取引データを保存する際はただ保存すればいいわけではなく、以下の要件を守る必要があります。

 

真実性の確保 タイムスタンプの付与 以下のいずれかの措置をすること

  • タイムスタンプが付与されたあとに取引情報を受領する
  • 取引情報を受領したあとは速やかに「タイムスタンプ」を付与し、保存の実行者または監視者の情報を確認できる環境を整える
  • 訂正や削除の結果を確認できるシステム、または訂正や削除ができないシステムで取引データの受領および保存をおこなう
  • 訂正や削除の防止に関する事務処理規定を定めて、規定に沿った運用をおこなう
可視性の確保 関連書類の備え付け システムの概要について記載した関連書類を備え付ける
見読性の確保 ・データを保存した場所に「電子計算機」「プログラム」「ディスプレイ」「プリンタ」並びにこれらの操作説明書を備え付ける

さらに、電磁的な記録をディスプレイの画面および書面に整然とした形式、および明瞭な状態で速やかに出力できるようにすること

検索機能の確保 下記の条件で検索が可能な状態にしておくこと

  1. 「取引年月日」「取引先」「取引金額」の3項目
  2. 「取引年月日」または「取引金額」による範囲指定
  3. 複数の記録項目の組み合わせ

参考:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました」

②猶予措置を活用したデータと紙を併用した保存

 

現在は、紙での保存を認める宥恕措置(ゆうじょそち)も終了しており、原則として電子取引した領収書や請求書は電子データでの保存が必要です。

 

ただし、原則ルールの電子保存を守れない「相当の理由」がある場合には、領収書などを紙で保存することを認める「猶予措置」もあります。

 

猶予措置に該当するための条件は以下のとおりです。

 

イ 保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要です。)

ロ 税務調査等の際に、電子取引データの「ダウンロードの求め」及びその電子取引データをプリントアウトし

た書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができるようにしている場合

引用元:国税庁|電子帳簿保存法の内容が改正されました

 

猶予措置が適用されれば、電子取引データの改ざん防⽌・検索機能など保存時に満たすべき要件を守る対応は不要です。

 

ただし、猶予措置が適用されたとしても、データの保存が全く不要になるわけではありません。

 

税務署にデータの提出を求められたときはすぐ対応できるようにしておかなければいけないため、結局はデータでの保存が必要になります。紙だけの保存でデータ保存しないと青色申告の取り消しなどのぺナルティが課される可能性があるので注意が必要です。

売上高5,000万円以下の企業が条件を満たせば、電子取引における検索要件が不要になる

電子取引データの保存要件については前章で解説したとおりで、かなり細かな規定を守る必要があります。

 

ただ、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の小規模な事業者に関しては、前述の要件のうち「検索機能の確保」については一部要件が緩和されています。

 

元々は基準期間の売上高が 1,000 万円以下である小規模事業者について、税務職員による電磁的記録のダウンロードの求めに応じられるようにしている場合は検索要件のすべてが不要でした。

 

上記の基準について令和5年度の税制改正で更なる緩和が行われ、現在では基準期間の課税売上高が「5,000万円以下」まで拡大しています。

 

一方、対象期間の課税売上高が5,000万円を超える企業の場合には、検索要件は原則通り対応が必要です。

 

まとめ

2022年に改正された電子帳簿保存法によれば、電子取引データは原則として電子データでの保存が必要です、しかも単に保存すれば良いわけではなく、「タイムスタンプの付与」「関連書類の備え付け」「見読性の確保」「検索機能の確保」のルールを守った保存が義務づけられています。

 

ただし、特定期間の課税売上高が5,000万円以下の小規模事業者は、特定要件を満たすことで検索機能の確保は不要です。事業の規模に合った要件を知ったうえで、電子帳簿保存法に沿った保存を行いましょう。

監修者

甲田拓也
甲田拓也 (公認会計士税理士甲田拓也事務所 代表)
早稲田大学卒業後、PwCグローバルファームや個人会計事務所を経て現事務所を設立。節税、資金繰り、IPO・マーケ支援を行うプロ会計士として活動。YouTubeでも情報発信中!
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