法人化するのに適したタイミングとは。利益や時期で判断をしよう

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法人化するのに適したタイミングとは。利益や時期で判断をしよう

法人化のタイミングは、利益額が一定に達したときや税金面で有利になるとき、事業拡大を目指すときなどがあげられます。逆に売上が不安定な場合や目的が明確でない場合はNGです。法人化のメリット・デメリットと手続きの方法もあわせて解説します。

※記事は2021年10月現在の情報になります。

甲田拓也
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甲田拓也 (公認会計士税理士甲田拓也事務所 代表)
早稲田大学卒業後、PwCグローバルファームや個人会計事務所を経て現事務所を設立。節税、資金繰り、IPO・マーケ支援を行うプロ会計士として活動。YouTubeでも情報発信中!

 

法人化に適したタイミングは?

法人化に適したタイミングは?

個人事業主として売上が安定してきたら、法人化を検討する場合もあるでしょう。法人化する際は、課せられる税額や事業拡大などの視点から、事業運営が有利になるタイミングを選ぶことをおすすめします。

利益額で判断をする

法人化を考えるタイミングの一つが、利益が一定金額を超えたときです。同じ額の利益を生んでいても、個人事業主と法人では課税率が異なるため、支払わなければならない税金の金額が異なります。

個人事業主の所得税は、所得が増えれば増えるほど税率が高くなる累進課税が適用されていますが、法人に課せられる法人税は、一定の所得範囲内であれば税率は変わりません。

個人事業主は、所得が330万円超695万円以下なら税率20%、695万円超900万円以下なら税率23%、900万円超1,800万円以下なら税率33%です。

法人税は、資本金1億円以下の中小法人の場合、所得が800万円以下の部分は15%、800万円超の部分は23.2%が課せられます。資本金が1億円を超える普通法人だと、所得の金額にかかわらず23.2%です。

所得が600万円から800万円の個人事業主なら、法人化を考えてもよいタイミングといえるのです。

消費税の免税期間を活用

法人化のタイミングを考える場合、せっかくなら消費税の免税期間を活用できるタイミングを選んでもよいでしょう。

個人事業主でも法人でも、課税売上高が1,000万円を超えると消費税の課税事業者になります。ただし、すぐに消費税を納税しなければならないわけではありません。納税しなければならないのは、売上高が1,000万円を超えてから2年後です。

消費税の課税事業者に当てはまるかどうかは、直近2年分の売上高で判断されます。ところが、新設法人の場合は直近2年分の売上高がありません。そのため、設立2年間は消費税の納税義務が免除されるのです。

つまり、個人事業主として売上高が1,000万円を超えた年の2年後に法人化することで、消費税の納税を2年間先延ばしできます。

ただし、資本金が1,000万円以上の法人は免税対象になりません。また、前年の前半6カ月の課税売上高が1,000万円を超える場合も免税対象ではないので注意しましょう。

(注 今後、令和5年10月以降はインボイス制度が始まるため、上記がそのまま当てはまらないこともあるので留意が必要です。)

事業を拡大したいときに

事業を拡大させたいという局面も、法人化に適したタイミングです。

一般的に個人事業主よりも法人の方が信用度が高く、金融機関の融資やクレジットカードの作成にあたっての審査は法人の方が通りやすい傾向があります。取引先という点においても、大きな企業ほど法人としか取引しないという企業も多いものです。

事業を拡大させるために資金調達を行う場合や、より大きな取引を行って実績を作りたいという場合は、法人化していた方が有利でしょう。

さらに、法人化している方が人材を採用しやすいのもメリットです。法人は社会保険に加入するため安心して働けると求職者は考えます。新たな事業のために人材を追加したいと考えるなら、法人化を検討しましょう。

事業内容によって時期が異なる場合も

法人化するタイミングは、事業内容に左右されるケースも少なくありません。

例えば、売上が増える繁忙期の真っただ中に法人化すると、本業に追われて法人化の手続きまで手が回らないかもしれません。法人化の手続きに時間を取られて、本業の売上がダウンしてしまう可能性もあります。

引っ越しシーズンがある不動産業界や、季節によって商品の売上が変わるファッション業界などは要注意です。

さらに、法人として何らかの許認可を得なければならない事業や、法人化するにあたって店舗・事務所を構えなければならない場合にも、法人化するタイミングを調整する必要があります。

このタイミングでの法人化はNG

このタイミングでの法人化はNG

法人化するタイミングを見誤ると、法人化することで得られるメリットがなくなってしまったり、個人事業主のときよりも事業運営が厳しくなったりするケースもあるでしょう。

法人化するタイミングとしてNGなケースを解説します。

法人化の目的が明確でないとき

何のために法人化するのかがはっきりしていない場合は、まだ法人化するタイミングではないでしょう。事業規模を大きくして資産を築きたい場合や、組織でのビジネスにステップアップしたいという場合はよいでしょう。

しかし『法人の方が社会的信用度が高い』『取引先や就職希望者からの印象がよさそう』と、なんとなく考えて法人化するのはおすすめできません。

法人化した後、会社をどうしていきたいのかを具体的に説明できるようになってから法人化しましょう。

売上が安定していないとき

まだ個人事業主としての売上も安定していない状態で法人化するのはおすすめできません。法人化することで個人事業主を継続した場合よりも高い税金を支払うことになり、資金繰りが困難になる可能性もあります。

また、売上の浮き沈みが激しい業界で事業を行っている場合は、なおさら法人化の前に売上の安定を優先しましょう。たとえ売上が低い時期でも、法人化により発生する法人住民税や社会保険料などを問題なく払えるような経営状態を維持することが大切です。

法人化するメリット・デメリット

法人化するメリット・デメリット

法人化することで得られるメリットはたくさんありますが、一方でデメリットもあることを忘れないようにしましょう。特に法人化すると、個人事業主に比べて守るべき法律やルールが増え、その分コストがかかります。

法人化のメリット・デメリットをしっかり理解したうえで法人化を考えましょう。

法人化のメリット

法人化することで得られる大きなメリットは、節税効果が見込めることです。

所得が増えるほど税率が高くなる所得税を課せられる個人事業主と違い、法人税は固定税率が適用されます。つまり、ある一定の年収を超えてくると、所得税率が法人税率を超え、法人税の方が安くなるタイミングが訪れるのです。

さらに、法人化することで社会的な信頼が高まり、銀行からの融資が受けやすくなったり、取引できる企業の幅や規模が大きくなったりと、事業運営がスムーズになります。

また外部から人材を雇用する際にも、法人化して社会保険に加入することで求職者からの評価が高まり、採用にも有利に働くでしょう。

法人化のデメリット

法人には、さまざまな費用や事務的な負担が発生するデメリットがあります。

法人登記に必要な定款の認証にかかる費用は、公証人認定手数料5万円、定款印紙代4万円(電子定款の場合は不要)、謄本交付手数料約2,000円(1枚につき250円)がかかります。

さらに法人用印鑑の購入に1万円前後が必要です。登記にあたり、株式会社を設立する場合は15万円以上の登録免許税がかかります。合同会社だと登録免許税は6万円以上です。

また、法人化すると会計処理が複雑になるほか、法律にのっとった決算と税務申告を行うために、税理士や公認会計士など専門家の力を借りる必要が出てきます。

さらに、社会保険に加入するなど新たな手続きがいくつも出てくるため、人件費を増やして事務員を新たに雇うか、自分で本業の合間に処理する必要があります。

個人事業主が法人化する方法

個人事業主が法人化する方法

法人化することのメリット・デメリットを理解し、自分の事業を法人化するタイミングとして最適だと思ったら、早速手続きを進めていきましょう。

法人の設立には必要な書類が多く、手続きも多いため、事前に正しい流れを把握しておくことをおすすめします。

事前の準備や必要書類

法人化の際は、会社の商号や事業内容、資本金、本社所在地などの情報を一通りまとめておきましょう。株式会社を設立する場合は、定款を作成する際に公証役場で認証してもらう必要があります。

また、法人の発起人全員分の印鑑証明書と法人の印鑑、就任承諾書、発起人決議書も準備しておきましょう。書類が不足していたり不備があったりすれば、法人設立の申請が遅れたり、修正するように指示されたりして時間がかかるため要注意です。

法務局で設立登記

必要書類をそろえたら、法務局で設立登記を行いましょう。申請が通れば登記事項証明書が発行されます。登記には資本金の1,000分の7(0.7%)の登録免許税が必要ですが、株式会社の場合には15万円という下限額があることを覚えておきましょう。

設立登記が完了しても、税務署に個人事業主の廃業届と法人設立届出書を出したり、年金事務所で社会保険の手続きを行ったりと、手続きは続きます。また、個人事業主のときに取引をしていた関係各所に、法人化したことをお知らせしましょう。

まとめ

法人化に適したタイミングはいくつかありますが、税金面のメリットが大きくなるタイミングや事業の拡大を目指すタイミングがおすすめです。法人化する目的が明確にあるわけではない場合や、売上が不安定なときには避けた方が無難だといえます。

法人化のメリット・デメリットを理解し、今の自分の事業に法人化が必要だと感じたなら、正しい手順を踏んで法人化しましょう。

 

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