仕入税額控除とは?計算方法やインボイス制度の適用要件も解説

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仕入税額控除とは?計算方法やインボイス制度の適用要件も解説

消費税の支払額を計算する際には仕入税額控除を行わなければなりません。

仕入税額控除を行うことで、正しい納税額を計算することができます。

この仕入税額控除には計算方法がいくつかあり、それぞれ計算結果がかなり異なります。

またインボイス制度の導入によって、2023年10月から仕入税額控除の適用対象になる事業者に大きな変化が生じます。

仕入税額控除の計算方法と、仕入税額控除とインボイス制度の関係、また、インボイス制度導入の手間を軽減する方法をご紹介していきます。

仕入税額控除とは?

仕入税額控除とは顧客から預かった消費税から、仕入れや外注先に支払った消費税を控除することです。

消費税の納税は、顧客から預かった消費税と、自社が課税仕入れの際に支払った消費税の差額を計算することによって行われ、消費税の二重払いを防がれる仕組みが計算の構造上あります。

例えばA社がB社から商品を50万円(税別)仕入れ、顧客に80万円(税別)で販売した場合、仕入税額控除を行うと納税する消費税は次のようになります。

A社 B社
販売額 80万円 50万円
販売先から受け取った消費税 8万円 5万円
課税仕入 50万円 0円
課税仕入の消費税 5万円 0円
仕入税額控除後の納税する消費税 3万円 5万円

A社はB社から課税仕入を行う際に、消費税5万円を支払っているため、仕入税額控除によって顧客から預かった8万円の消費税から5万円を控除します。

これによって、A社は3万円、B社は5万円の消費税を収めることで、合計で8万円の消費税が納税されることになります。

仕入税額控除がなければ、A社は8万円の消費税を納めた上に、B社に対して5万円の消費税分を支払っているので、二重に消費税を収めることになってしまいます。

仕入税額控除は消費税の二重払いを防ぐために必要な会計上の処理になります。

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仕入税額控除を計算する4つの方法

仕入税額控除の計算はおもに次の4つの方法があります。

  • 全額控除方式
  • 個別対応方式
  • 一括比例配分方式
  • 簡易課税制度

それぞれの計算方法の詳細と特徴について詳しく解説していきます。

全額控除方式と個別対応方式

全額控除方式は文字通り課税仕入に含まれている消費税を全額仕入税額控除する方式です。

一方で個別対応方式では次の計算式によって仕入税額控除を求めます。

仕入税額控除=課税売上にのみ要する課税仕入れ等に係る消費税+(課税売上と非課税売上に共通して要する課税仕入等に係る消費税×課税売上割合)

例えば、次のようなケースを考えてみましょう。

課税売上にのみ要する課税仕入れ等に係る消費税:60万円

課税売上と非課税売上に共通して要する課税仕入等に係る消費税:80万円

課税売上割合:80%

60万円+(80万円×80%)=124万円

一括比例配分方式

一括比例方式では、課税仕入の対応する売上の区分が課税売上なのか非課税売上対応なのかどちらかが分からない場合などに採用されます。

計算式は次の通りです。

仕入税額控除 = 課税仕入れ等に係る消費税額 × 課税売上割合

課税仕入等に係る消費税額:100万円

課税売上割合:80%

100万円×80%=80万円

簡易課税制度

簡易課税制度とは、事業区分によって定められた「みなし仕入率」を課税仕入に乗じることによって仕入額控除を求める方法です。

事業区分 みなし仕入率 該当する事業
第1種事業 90% 卸売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業)
第2種事業 80% 小売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで販売する事業で第1種事業以外のもの)、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業)
第3種事業 70% 農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含みます。)、電気業、ガス業、熱供給業および水道業をいい、第1種事業、第2種事業に該当するものおよび加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を除く
第4種事業 60% 第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業および第6種事業以外の事業をいい、具体的には、飲食店業など
なお、第3種事業から除かれる加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業
第5種事業 50% 運輸通信業、金融・保険業 、サービス業(飲食店業に該当する事業を除きます。)をいい、第1種事業から第3種事業までの事業に該当する事業を除く
第6種事業 40% 不動産業

 

例えば、小売業のみなし仕入率は80%です。

課税仕入に係る売上が100万円、売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額は0円の場合には、みなし仕入率80%を乗じて、仕入税額控除は80万円となります。

簡易課税制度は非常に簡単に仕入額控除を計算できる方法ですが次の条件を満たさなければ利用できません。

  • 「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署へ提出する
  • 該当期間の課税売上が5,000万円以下の課税事業者

仕入税額控除の対象になる取引

仕入税額控除は他の事業者との取引で発生した課税仕入れに含まれる消費税について適用されるものです。

簡単に言えば、次のような消費税の課税対象になる仕入れをおこなった場合には仕入税額控除の対象になります。

  • 商品などの棚卸資産の購入
  • 原材料等の購入
  • 機械や建物のほか、車両や器具備品等の事業用資産の購入または賃借
  • 広告宣伝費・厚生費・接待交際費・通信費・水道光熱費などの支払い
  • 事務用品・消耗品・新聞図書などの購入
  • 修繕費
  • 外注費

これらの課税仕入に対して仕入税額控除を適用するためには、課税仕入として帳簿上で認識すること以外にも適用される要件を満たす必要があります。

この要件は2023年9月30日までのインボイス制度開始前と、2023年10月1日からのインボイス制度開始後で異なります。

それぞれの適用要件を見ていきましょう。

インボイス制度開始以前の仕入税額控除と適用なる要件

インボイス制度が開始される前の2023年9月30日以前の仕入税額控除の適用になる要件は次の通りです。

仕入税額控除の要件 要件
区分経理に対応した帳簿・請求書を保存する ・帳簿への記載事項

課税仕入れを行った相手方の氏名または名称

課税仕入れを行った年月日

課税仕入れにかかる資産または役務の内容

課税仕入れにかかる支払対価の額(消費税額の相当額を含む)

法定事項を帳簿に記載する ・請求書(類する書類含む)への記載事項

請求書の作成者の氏名または名称

課税資産の譲渡などを行った取引年月日

課税資産の譲渡などにかかる資産または役務の内容(軽減税率対象資産の場合はその旨が分かるように明記が必要)

異なる税率ごとに合計した対価の額(取引における消費税がある場合は税込)

請求書の交付を受ける事業者の氏名または名称

区分記載請求書を保存する ・保存期間

帳簿:閉鎖した日から7年間

請求書等:受領した日が含まれる課税期間の末日の翌日から2ヶ月を経過した日から7年間

法定事項を記載した区分経理に対応した帳簿と請求書を閉鎖した日から7年間保存することが条件になります。

インボイス制度開始以後の仕入税額控除の適用要件

インボイス制度開始以後である2023年10月1日以降に仕入税額控除の適用を受けるには上記の帳簿の保存に加えて「適格請求書(インボイス)を保存した取引であること」という条件を満たさなければなりません。

これまでは仕入税額控除を行うためには、単に帳簿を保存していれば問題ありませんでした。

しかしインボイス制度開始からは、仕入税額控除ができる取引は「適格請求書(インボイス)を保存した取引」に限られます。

適格請求書(インボイス)を発行できるのは課税事業者だけですので、免税事業者から課税仕入を行っても仕入税額控除はできないという点に注意してください。

仕入税額控除の適用に必要なインボイス制度とは?

2023年10月1日から仕入税額控除の適用を受けるにはインボイスが必要になります。

このインボイス制度とはどのような制度なのでしょうか?

制度の概要と売り手側、買い手側双方の対応について詳しく解説していきます。

適格請求書の作成が義務付けられる

仕入税額控除を行うためには、適格請求書(インボイス)の作成と保存が求められます。

適格請求書には次の5つの事項を記載する必要があります。

  • 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)
  • 税率ごとに区分した消費税額等または適用税率

そして、適格請求書(インボイス)を発行できるのは課税事業者だけです。

適格請求書(インボイス)を発行できない免税事業者から課税仕入を行っても仕入税額控除を行うことができません。

例えば、100万円(税別、消費税10万円)の売上に対して、課税仕入が70万円(税別、消費税7万円)の場合、仕入税額控除を行えば、10万円–7万円=3万円の消費税の納税となりました。

しかし、この課税仕入に適格請求書(インボイス)が受け取れない場合には、顧客から預かった10万円の納税をしなければなりません。

消費税の課税事業者は、課税仕入を行う際に、適格請求書(インボイス)を発行できる課税事業者から仕入を行わなければ損失が生じてしまいます。

制度施行後に求められる売り手側の対応

インボイス制度施行後には、売り手側は、適格請求書を発行できるように、課税事業者として適格請求書発行事業者の登録を済ませておく必要があります。

これまでは売上1,000万円以下の事業者は消費税の免税事業者でしたが、今後は売上1,000万円以下の事業者も適格請求書発行事業者として登録し、適格請求書発行事業者として適格請求書(インボイス)を発行できなければ、販売先の取引先は仕入税額控除を行うことができません。

取引先が仕入税額控除できるように、適格請求書発行事業者としての登録を済ませておきましょう。

なお、適格請求書発行事業者として登録をすることによって、今後は売上1,000万円以下の事業者であっても、消費税を支払わなければならなくなります。

しかし、適格請求書(インボイス)を発行できないと、取引先から取引を断られてしまう可能性があるので、適格請求書発行事業者としての登録を済ませて必要項目を満たす請求書を用意することも検討しましょう。

制度施行後に求められる買い手側の対応

課税仕入を行う買い手側が仕入税額控除を行うためには、課税仕入にあたって適格請求書(インボイス)の保存がないと仕入税額控除の適用ができません。

そのため、仕入先企業に適格請求書発行ができるかの確認をしましょう。

仕入先の中には、課税事業者となることを嫌って、適格請求書を発行しないケースもあるかもしれません。

このような場合には、適格請求書(インボイス)を発行してくれる企業へと仕入れ先を変更するなどの対応も検討するケースも出てくるでしょう。

インボイス制度導入の手間を軽減する方法

インボイス制度を導入する際には適格請求書発行事業者からの仕入れと、そうではない業者からの仕入れや少額の仕入れの扱いなどで非常に手間がかかります。

国はさまざまな特例を用意して、このような手間を軽減できるよう努めています。

インボイス制度導入の手間を大幅に軽減できる特例措置をご紹介していきます。

適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れに係る経過措置とは?

国はインボイス制度について6年間の経過措置を設けています。

6年間の経過措置期間は、インボイス制度導入後に適格請求書を発行できない免税事業者からの仕入れでも一定割合は仕入税額控除を行うことができます。

  • 2023年10月1日から2026年9月30日まで:免税事業者からの課税仕入の80%控除可能
  • 2026年10月1日から2029年9月30日まで:免税事業者からの課税仕入の50%控除可能

制度が始まって最初の3年は適格請求書(インボイス)がない仕入れの80%を仕入税額控除ができます。

また、次の3年間は適格請求書(インボイス)がない仕入れの50%を仕入税額控除することが可能です。

課税仕入先がインボイス制度に対応していなくても、すぐに全額が仕入税額控除できなくなるわけではありません。

仕入税額控除が適用される少額特例とは?

仕入税額控除の少額特例とは、2023年10月1日から2029年9月30日の経過措置期間中に行う課税仕入について、支払対価の額が税込1万円未満の場合には一定の事項が記載されていれば帳簿の保存のみで仕入税額控除の対象になるというものです。

なお、本制度の対象になるのは基準期間における課税売上高が1億円以下または特定期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者だけとなっています。

証明書の交付なしでも仕入税額控除が適用されるケースとは?

次のいずれかに該当する場合には、適格請求書(インボイス)がなくても、帳簿の保存だけで仕入税額控除の対象となります。

  1. 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
  2. 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除く)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引
  3. 古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物の購入
    ※古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限る
  4. 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物の取得
    ※質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限る
  5. 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物の購入
    ※宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限る
  6. 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品の購入
    ※購入者の棚卸資産に該当するものに限る
  7. 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等
  8. 適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス
    ※郵便ポストに差し出されたものに限る
  9. 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費・宿泊費・日当及び通勤手当等

公共交通機関のチケット代金や自動販売機の購入した場合には、帳簿だけ保存しておけば仕入税額控除を行うことができます。

どの課税仕入に適格請求書(インボイス)の発行が不要なのかについて、しっかりと理解しておきましょう。

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まとめ

仕入税額控除とは、顧客から受け取った消費税から自社が課税仕入の際に支払った消費税を控除して、支払う消費税を求めることです。

また、仕入税額控除をすることによって、消費税を国と課税仕入先へ二重で支払ってしまうリスクを回避できます。

2023年10月から仕入税額控除を行うことができる課税仕入には適格請求書(インボイス)が必要になります。

これをインボイス制度といいます。

適格請求書がない課税仕入については仕入税額控除ができないので、免税事業者となっている売り手側は買い手に損失を負担させないためには、課税事業者として適格請求書発行事業者になる必要があります。

買い手側は仕入先に対して、適格請求書発行事業者になるよう話し合うことも検討しましょう。

制度開始から6年間は経過措置があるので、すぐに全額仕入額控除ができなくなるわけではありませんが、50%〜80%しか控除できないのでインボイス制度が始まる前に準備を終えておきましょう。

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