電子帳簿保存法の改正に沿う請求書の保存方法|発行側の保管の注意点
, 経費・勘定
電子帳簿保存法によれば請求書は一定要件を満たしたうえで電子データとして授受することが可能です。インボイス制度が始まった現在では受領側に7年の保管義務が生じるだけでなく、発行側も請求書の控えの発行と保存が義務になっています。
本記事では、改正された電子帳簿保存法によって、請求書を発行した側はどのようにデータ保管を進めるのか、そのポイントや注意点を紹介します。
電子帳簿保存法における請求書の扱いは2通りある
電子帳簿保存法は、各法律で保存が義務付けられている国税関係の書類や帳簿について、
一定条件を満たすことで電子化して保存することが可能になる法律です。
例えば、紙で授受した請求書は「スキャナ保存」、電子データで授受した請求書は「電子取引」の要件をみたすことで電子保存が可能になります。
また、直近2022年1月の改正で、電子データで授受した請求書などを紙に印刷しての保存が認められなくなりました。
1.スキャナ保存
請求書をはじめとした国税関係の書類を紙の状態で受け取った場合、従来は紙での保存が行われていました。2022年1月の電子帳簿保存法の改正以降は、スキャナなどで読み取って電子データとして保存する要件が緩和されています。
税法上、請求書は紙原本の保管が原則です。ただし、電子帳簿保存法の要件に従ってスキャナ保存することで電子データとしての保管ができ、要件を満たせば電子データ作成後に紙の原本を破棄することも可能です。
2.電子取引データのデータ保存
請求書は紙でのやりとりだけでなく、Eメールに添付するなどの方法によって電子データでのやりとりが行われることもあります。
2023年12月31日までは電子データを印刷して紙保存が可能でしたが、2024年1月1日以降は電子データの請求書は原則、電子データでの保管しかできなくなりました。
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電子帳簿保存法では請求書の発行側に注意点がある
電子帳簿保存法は2022年1月に改正され、2023年12月31日で宥恕期間も終了しました。
改正された法律に反しないよう、請求書を発行する側はこれから紹介するポイントを守って業務をおこないましょう。
電子取引で発行した請求書は電子データのままで保存する
改正された電子帳簿保存法では電子データの請求書を電子データで保管することが義務付けられています。これは受領した側だけでなく、発行した側も同様です。
請求書を紙ではなく、電子取引で顧客と授受した場合、請求書の控えは原則として電子データで保管することになります。
請求書の控えは7年間保管する
2023年10月から始まったインボイス制度が始まる前は、請求書を発行した側には保存義務も請求書の控えの作成義務もありませんでした。取引を行った証拠として請求書の控えを作成した場合に限り、保存義務が発生していたのが従来の流れです。
ただし、インボイス制度のもとでは消費税の仕入税額控除を受ける「適格請求書発行事業者」には適格請求書の控えを作成して保存する義務が課されるので注意が必要です。
保存期間は法人と個人事業主で異なります。法人の場合は原則7年間、欠損金がある場合は10年間です。一方、個人事業主では原則5年間です。ただし、消費税課税事業者の場合は法人と同じく7年になります。
電子帳簿保存法に対応した請求書の発行のポイント
いまは紙で請求書を発行している企業も多いかもしれませんが、電子帳簿保存法が本格的に運用されると多くの企業で電子取引によって請求書をやりとりすることになるはずです。
送信はPDFファイルが基本
請求書の書類を電子データとして送付する際、形式は「PDF」が一般的です。法的にもPDF文書での保管が認められていることから、ほとんどのケースでPDFによる保管が行われています。
業務システムの多くで自動的にPDFの請求書を作成できるため、システムさえ使っているなら特に対応する必要はありません。もし自動的にPDFにできない場合でも、Wordで作成した請求書をPDFとしてエクスポートすることもできます。
注意点として、WordやExcelデータのままで請求書を送るのは避けましょう。あとから書き換えが可能になってしまい、取引の証拠としての請求書の役割を果たすことができなくなります。
請求書への押印は不要
2024年現在では、法律上は紙でも電子データでも、請求書に押印する必要はありません。印鑑がない請求書でも有効と見なされるため、その旨を先方に伝えて了承を得れば印鑑を押す手間が省けます。
ただ、印鑑を押すことが慣習になっていることが多く、社内規定で押印を省略できないケースもあるかもしれません。
そのようなときは電子印鑑を利用しましょう。PDFには従来の印鑑を押すことはできませんが、電子印鑑であれば印影を残せます。
ファイル名が分かりやすくなるようにして送る
請求書を受け取った側は、7年間の保存が義務付けられており、毎月請求書を送ると保存する数が膨大になります。あとから必要な請求書をすぐに検索できるように、双方で打ち合わせたうえで分かりやすいファイル名にして送信することを心がけましょう。
実際に、電子帳簿保存法では「検索性の確保」が求められています。
五 当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を確保しておくこと。
イ 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先(ロ及びハにおいて「記録項目」という。)を検索の条件として設定することができること。 ロ 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。 ハ 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。 |
WebからのダウンロードでもOK
電子的に作成した請求書について、多くの会社でメールに添付して送信することが一般的です。
一方で、Web上のシステムに表示させて、そこから顧客にダウンロードしてもらうことも可能です。
例えば、企業と個人事業主がオンラインで取引データをやりとりするシステムでは、Webで請求書のやりとりをする形式が見られます。
ただし、先方の担当者がいつ請求書をダウンロードするかは分かりません。双方で話し合いのうえでダウンロードできる期間を決めるなど、お互いに使いやすい状態になるように工夫しましょう。
電子発行への切り替えは双方が合意のうえで行う
改正された電子帳簿保存法で電子保存の要件が緩和され、今後はますます請求書の電子化が進むと予想できます。
ただし、請求書の電子化には取引先の事前了承が必要不可欠です。各企業で業務のDX化が進められているものの、その進捗は企業によって全く異なります。取引先によっては電子データでの請求書の授受を断られる可能性もゼロではありません。
一方的に切り替えるのではなく、電子化のメリットを提示しながら切り替えに理解を得られるようにすることが大切です。
請求書を電子化することによる請求側のメリット
請求書を発行する企業が電子化を進めることで、以下のようなメリットが得られます。
発行にかかるコストを削減できる
紙で請求書を作成・発行するには、請求書を作成する用紙や封筒代、切手代、郵送代などが必要になります。また、送付した請求書の控えを紙で保管するなら、膨大なスペースを管理するコストも必要です。
電子データで請求書を発行すれば、用紙やインク代、郵送費用などを大幅に削減することが可能です。
在宅勤務中でも請求書を発行できる
請求書を発行するシステムがオンラインのクラウド型であれば、インターネットさえあればいつでもどこでも請求書が作成できます。近年は自宅やオフィス街で仕事をするテレワークも浸透していますが、電子データで請求書をやり取りできれば、社外で請求書の発行業務を進めることができます。
請求書の送受信の確認が容易になる
電子データになった請求書はメールで送信することで送信履歴が残るほか、システムによっては「先方がメールを開封した」「請求書をダウンロードした」といった情報が分かるようになります。
一方の郵送では届くまでに時間がかかり、手違いで先方の手元に届かない可能性もあります。
請求書を確実に先方に届ける意味でも、電子データの請求書は有効です。
まとめ
電子帳簿取引法の改正によって、電子データでの取引が今後ますます盛んになっていくことが考えられます。請求書も例外ではなく、発行する側も控えを残すことが必要になるなどこれまでと業務内容が異なってくるでしょう。先方と電子化の打ち合わせをしながら、スムーズに電子保管に移行できるようにしていきましょう。
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監修者
甲田拓也 (公認会計士税理士甲田拓也事務所 代表)
早稲田大学卒業後、PwCグローバルファームや個人会計事務所を経て現事務所を設立。節税、資金繰り、IPO・マーケ支援を行うプロ会計士として活動。YouTubeでも情報発信中! |
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