個人事業主が確定申告をしないリスクとは。確定申告の方法も解説

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個人事業主が確定申告をしないリスクとは。確定申告の方法も解説

個人事業主が確定申告を怠ると、ペナルティを受けるリスクがあります。事業で収入を得た場合は、確定申告の要・不要を慎重に検討しましょう。個人事業主が確定申告すべき理由やしないリスク、さらには確定申告を行う流れについて紹介します。

※記事は2021年11月現在の情報になります。

甲田拓也
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甲田拓也 (公認会計士税理士甲田拓也事務所 代表)
早稲田大学卒業後、PwCグローバルファームや個人会計事務所を経て現事務所を設立。節税、資金繰り、IPO・マーケ支援を行うプロ会計士として活動。YouTubeでも情報発信中!

 

確定申告が必要な人とは?

確定申告が必要な人とは?

確定申告とは、個人・法人等が年間所得から納付すべき税額を算出し、申告・納税を行うことです。対象は1月1日から12月31日までに何らかの収入を得た人ですが、控除等の適用によって申告不要となるケースが少なくありません。

まずはどのような人が確定申告の対象になるのか、理解しておきましょう。

個人事業主や副業を行っている人

個人事業主として事業所得があったり、本業以外の副業で収入を得ていたりする人は、条件によっては確定申告が必要となります。

このほか以下に当てはまる人なども確定申告の対象になると考えましょう。

 

・不動産収入・有価証券等の売買による所得がある人
・一時所得がある人
・所得税の猶予を受けている人
・源泉徴収されていない退職金を受け取った人
・公的年金を受給している人

 

給与所得を得ている会社員は、会社が申告・納税を行います。給与以外に収入がない人は、基本的に確定申告の必要がありません。

ただし会社員でも、以下に該当する人などは確定申告が必要です。

 

・副業収入が20万円を超えた
・給与収入が2,000万円を超えた
・2カ所以上から給与を得ている
・不動産(土地・建物)を売却した
・贈与を受けた
・年度途中で退職して再就職していない
・実家の空き家を売買した

 

特に必要のない場合でも、確定申告によって還付を受けられるケースがあります。例えば高額な医療費を支払った人は、確定申告することで支払額に応じた還付があるでしょう。

所得が48万以下の場合は必要なし

48万円とは、国が定めた基礎控除の金額です。年間所得2,400万円以下の人は、無条件に所得から48万円を差し引けます。経費や控除を差し引いた結果、所得額が0円またはマイナスになれば申告の必要はありません。

例えば年間収入が同じ100万円で、経費が60万円と30万円の個人事業主のケースについて見てみましょう。

 

・経費が60万円の個人事業主:(100万円-60万円)-48万円=-8万円
・経費が30万円の個人事業主:(100万円-30万円)-48万円=22万円

 

経費が60万円の個人事業主は、基礎控除の48万円を引くと-8万円となります。この場合、申告の必要はありません(但し、還付の可能性がある場合は、申告をした方が得です)。

一方、経費が30万円の個人事業主は、基礎控除を引いても22万円オーバーします。このケースについては、確定申告が必要です。

なお基礎控除額は、年間所得が2,400万円から増えるごとに減額されます。年間所得が2,500万円を超えた場合、基礎控除は適用されません。

参考:No.1199 基礎控除|国税庁

 

開業届と青色申告について

個人事業主になったら開業届を出しましょう。節税に有利な青色申告を行うには、開業届の提出と併せて青色申告の提出も必要です。

青色申告とは、不動産所得・事業所得・山林所得のある人が一定の条件を満たすと、税法上有利な扱いを受けられる制度です。

『青色申告特別控除』が適用された場合、65万円・55万円・10万円のいずれかの金額を所得から差し引くことが認められます。例えば65万円の控除を適用できれば、基礎控除48万円と合わせて『113万円』までは所得税の対象となりません。

このほか『赤字を翌年度以降3年間繰り越せる』『光熱費などの家事関連費を経費として算入できる』といった税の優遇措置があります。個人事業主は開業届を提出して青色申告をした方が、確定申告時のメリットが大きいといえます。

参考:No.2072 青色申告特別控除|国税庁

 

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個人事業主が確定申告をしないとどうなる?

年間所得金額が各種控除内に収まらない場合は、個人事業主として確定申告が必要です。気が進まないからといって確定申告をしなかったらどうなるかについて考えてみましょう。

確定申告の手間よりも、無申告が発覚した方がよほど面倒なことになると理解できるはずです。

無申告が発覚する理由

無申告が発覚すると、税務職員が税務調査にやってくることがあります。発覚する理由はさまざまですが、個人事業主の場合は以下のことが考えられるでしょう。

 

・知人の密告
・SNSなどからの追跡
・取引先の支払調書

 

周囲に正義感の強い人や嫉妬心の強い人がいた場合、その人が税務署に密告するかもしれません。税務署がSNSに目を光らせているケースも多々あり、うっかりつぶやいたことが税務調査につながる可能性もあります。

また個人事業主の場合、取引先から特定されるケースもあるでしょう。取引先の帳簿には、『いつ』『誰に』『いくら』支払ったという記録が残っています。

取引先が税務調査を受けた場合、取引相手であるあなたの無申告が発覚する可能性は非常に高くなるのです。

延滞税や無申告加算税などが課される

税務調査の結果、所得税を納付することになった場合、所得税にプラスして『延滞税』『無申告加算税』などが課せられます。

延滞税とは、納付期限内に税金を納めなかった場合に課される税金です。納付期限の翌日から完納する日までの日数に応じて、本来の所得税に利息相当の金額が上乗せされます。

一方、無申告加算税も、納付期限内の確定申告を怠った場合に課せられる税金です。税額は納税額によって決定され、以下の通り定められています。

 

・納税額のうち50万円まで:税額に15%を乗じた額を加算
・納税額のうち50万円を超える部分:税額に20%を乗じた額を加算

 

無申告加算税率は、税務調査を受ける前の自主申告に対しては5%に軽減されます。延滞税・無申告加算税の負担を少なくするなら、何をおいても早めの納付が必須です。

参考:No.9205 延滞税について|国税庁
参考:No.2024 確定申告を忘れたとき|国税庁

 

罪に問われる場合も

納税の義務があるにもかかわらず義務を果たさなかった場合、不正行為とみなされて『重加算税』が課されるケースもあります。無申告の場合、税額に対して40%と高い税率が設定されています。

また『故意に申告を怠った悪質な納税者』とみなされた場合は、刑事罰の対象となる可能性もあるでしょう。

軽度の犯罪とみなされた場合は『1年以下の懲役または50万円以下の罰金』、より悪質だとみなされた場合は『5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方』が課せられる可能性があります。

軽い気持ちで確定申告を怠ると、大きなペナルティを受ける恐れがあると心得ましょう。

確定申告をしないとこんなリスクも

確定申告をしないとこんなリスクも

個人事業主の場合、確定申告は自身の職業・所得を証明する公的な手段です。無申告で済ませてしまうと、今後の業務に悪影響を及ぼす恐れがあるでしょう。個人事業主が確定申告しない場合、どのようなリスクがあり得るか紹介します。

資金調達がしにくくなる

事業資金を金融機関から借りる場合、必ず金融機関による審査があります。

審査では、事業の状況を見るために、申告済みの確定申告書・収支内訳書・青色申告決算書・納税証明書などの提出を求められるケースがほとんどです。このとき必要な書類がないと、資金調達はほぼ不可能となるでしょう。

このほか、国や自治体の交付金・助成金などを受ける場合も、収支内訳書や青色申告決算書などの提出が求められます。

個人事業主は不要であっても確定申告を行い、事業の実態を公的に証明できるようにしておくのがベターです。

所得を証明できない

所得証明書は確定申告の金額を元に発行されます。個人事業主が無申告で済ませてしまうと、所得を証明する手段がなくなってしまいます。

例えば家を借りたいときや住宅ローンを組むとき、保育園に子どもの入園を希望するときなどに、必要な書類がそろえられず困ることになるでしょう。

また保育料や公団住宅の賃料は、所得額に応じた金額が設定されます。所得を証明する手段がない場合、本来の金額よりも高額な保育料・賃料を請求されるかもしれません。

さまざまな控除が受けられない

確定申告書は自治体と共有され、住民税の算出に使われます。無申告で済ませると、住民税の計算時に医療費控除や青色申告特別控除が適用されません。本来の金額よりも高額な住民税額を課される恐れがあります。

また国民健康保険料の軽減措置を受ける場合も、確定申告による所得の証明が必要です。無申告で軽減措置を求めても、『所得不明』として対応してもらえません。通常通り一定額の支払いが必要となるでしょう。

税額軽減制度はさまざまありますが、確定申告をしないと受けられないものが少なくありません。確定申告が不要なケースでも、申告はしておいた方が安心です。

個人事業主が確定申告を行う方法

個人事業主が確定申告を行う方法

個人事業主として確定申告を行う際は、定められた方法で税額を算出して申告書に記載しなければなりません。金額の根拠となる書類の提出も必要なため、早めに準備しておくことをおすすめします。

個人事業主が確定申告を行う流れや提出方法について見ていきましょう。

確定申告で用意する書類

事業所得として確定申告する場合は『申告書B』を、雑所得として確定申告する場合は『申告書A』を使用します。申告書作成時には、以下の書類を用意しましょう。

 

・所得税青色申告決算書(収支内訳書)
・控除に必要な証明書類(生命保険料控除証明・医療費証明など)
・領収書など

 

必要な書類は、どのような控除を適用するかによって異なります。本業があって給与所得を得ている人は、源泉徴収票なども必要です。

必要書類がそろったら、付票・計算書を準備して、確定申告書を作成します。近年は自動で確定申告書を作成してくれるクラウド型会計ソフトもあるので、それらを活用すると便利です。

自分で簡単に作りたい人は、『国税庁 確定申告書等作成コーナー』から作成してもよいでしょう。

【確定申告書等作成コーナー】-作成コーナートップ

 

税務署に申告書を提出

確定申告書を作成したら、事業地を管轄する税務署に提出します。申告と納付の期間は例年2月16日から3月15日です。提出が必要な書類を申告書に添付して、期間内に納付・納税までを行いましょう。

提出方法は主に『持参する』『郵送する』『電子申告』の3種類があります。いずれの方法でも構いませんが、青色申告で65万円の控除を受けるには電子納税が必須です。申告時にはマイナンバーカードが必要となるので、早めに準備しておきましょう。

なお、電子申告は国税庁が管理する『国税電子申告・納税システム(e-Tax)』から行えます。

【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)

 

もし確定申告を忘れてしまったら

もし確定申告を忘れてしまったら

確定申告を忘れてしまった場合、そのまま放置してはいけません。無申告よりも遅れて申告する方が、大きなトラブルにならずに済みます。確定申告を忘れてしまうとどのようなことになるのか、見ていきましょう。

できるだけ早めに申告を

確定申告を忘れた場合は、気付いた時点で申告・納付を行いましょう。提出期限から日が浅いほど、ペナルティを小さく抑えられます。

例えば、無申告によって課せられる無申告加算税は、以下の要件を全て満たす人には適用されません。

 

・法定申告期限から1カ月以内に自主納付した
・納付すべき税額を全て期限内に納付した
・申告書を提出した日の前日から5年前までの間に、無申告加算税または重加算税を課されたことがない
・無申告加算税の不適用を受けたことがない

 

期限後に確定申告を行った場合は、申告書を提出した日が納期限です。必ずその日に納税しましょう。

無申告加算税が課されない場合でも、延滞税の納付は必要です。詳細な税額については、税務署に問い合わせることをおすすめします。

参考:No.2024 確定申告を忘れたとき|国税庁

 

申告内容に誤りがあった場合

確定申告の内容に誤りがあった場合、申告期限内なら随時修正申告が可能です。申告書を作り直して再提出すれば、ペナルティは課せられません。

一方、申告期限を過ぎてしまった場合は、本来より『多く申告したのか』『少なく申告したのか』で対応が異なります。

多く申告した場合は『更正の請求書』の提出が必要です。所得税の過剰納付分は還付されます。修正期限は5年以内と定められているため、期間内の請求が必須です。

少なく申告した場合は『修正申告』を行います。税務署の指摘を受ける前なら、ペナルティは課せられません。ただし延滞税が上乗せされるため、納税額は上がります。

参考:確定申告が間違っていたとき|国税庁

 

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まとめ

個人事業主の場合、収入の多寡にかかわらず確定申告を行うのがベターです。確定申告は所得税を納付するための手続きですが、収入・所得を証明したいときの根拠にもなります。企業に属さない個人事業主の場合、申告のメリットは大きいでしょう。

無申告が発覚して税務調査を受ければ、無申告加算税や延滞税等のペナルティは避けられません。悪意があるとみなされれば刑罰の対象にもなるため、確定申告は適切に行いましょう。

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