決算が赤字でも融資は受けられる?赤字決算で融資が受けにくいケースとおすすめの融資方法

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決算が赤字でも融資は受けられる?赤字決算で融資が受けにくいケースとおすすめの融資方法

企業にとって資金調達は事業運営のために必要不可欠なものです。ただ、赤字決算の状態では「融資を受けられないのではないか?」と心配になる方もいるでしょう。

赤字決算には良い面もあるため一概に「悪」ではないものの、融資を受けにくい決算があるのも事実です。

本記事では赤字決算で融資が受けられるのか、融資が受けにくいケースや融資を受けられる可能性のある制度やローンを解説します。

決算が赤字でも融資を受けることは可能

一般的に、赤字決算になった企業が銀行から融資を受けるのは簡単ではありません。ただ、完全に不可能ということではなく、決算が赤字でも融資を受けることは十分に可能です。

銀行は審査の際に返済能力を重視することから赤字企業はリスクとみなされることが一般的です。

一方、「一時的な赤字であってすぐに解消できる見込みがある」という場合には赤字でも融資を受けられるでしょう。

また、起業2年目などの創業期は設備投資にお金をかけるべき時期として、審査のうえで赤字がある程度許容される可能性もあります。

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公認会計士・税理士 甲田拓也事務所

赤字決算とは

赤字決算は、企業が一定の事業活動をした結果、費用が収益を上回って損失を出した状態です。つまり、製品やサービスの販売収益が、製品の製造コストや人件費などを下回ったことを意味します。

赤字決算になったらすぐに企業運営ができなくなるわけではありませんが、赤字が何期も続くと資金繰りができなくなり、倒産するリスクがあります。

ただ、詳しくは後述しますが、あえて赤字の状態で決算する企業は珍しくありません。

赤字決算のメリット

赤字決算には、以下のようなメリットもあります。

  • 法人税等が軽減できる
  • 法人税等の還付が受けられる
  • 繰越欠損金を活用できる

あえて赤字決算にすることで税金を節税し、税金として納めなかった資金を事業活動に充てられるでしょう。

法人税等が軽減できる

赤字決算になると、法人税等の節税になります。

法人は1年間の所得をもとに法人税額等を算出し、決算日の翌日から起算して2か月後までに納税をしますが、法人税額等は会社の収益から費用を差し引いた利益(所得)に法人税率をかける形で計算します。

つまり、黒字でなくなったことで法人税等が軽減されます。

法人税等の還付が受けられる

中小企業の場合、赤字決算になった場合に前期に納税した法人税等の還付を受けることができます。

前期に納税した法人税以上の金額は還付されませんが、還付を受けることができれば資金繰りの改善に役立つでしょう。

繰越欠損金を活用できる

赤字の起業は利益が出ていないため法人税等がかからず、さらに赤字分を繰越すことで将来の法人税等の軽減を受けることもできます。

赤字分を翌年に繰り越し、翌年の黒字から赤字分の金額を控除することで翌年以降も法人税等を抑えることが可能です。平成30年4月1日以後に開始する事業年度については、最大で10年間赤字を繰り越しできます。

赤字決算のデメリット

赤字決算には、以下のようなデメリットがあるのも事実です。

  • 債務超過で倒産のリスクがある
  • 金融機関からの融資を受けにくくなる

法人代表や事業主の方は、これらのリスクを理解しておく必要があるでしょう。

債務超過で倒産のリスクがある

赤字決算は単年だけではそこまで大きなリスクではありませんが、これが何年も続くと問題です。

企業の内部留保がなくなったりキャッシュフローが悪化したりして、企業にとって重大な財務的なリスクが生じる可能性があります。

また、赤字が続くことで企業の収益力そのものが低下し、負債の返済能力が低下していきます。事業運営のために新たな借金で債務が増大し、さらに資金繰りが悪化して倒産にいたることも考えられます。

金融機関からの融資を受けにくくなる

赤字だとしても銀行などの金融機関からの融資を受けることは不可能ではありませんが、黒字の状態と比べると難しくなるのは確かです。

金融機関は融資の際に企業の財務状況を詳細に調べて返済能力を評価します。

赤字決算になった理由はさまざまですが、期間内に収益を上げられなかった事実は厳しく評価されるでしょう。

将来的な財務リスクがあると判断されると、融資を受けられない可能性もあります。

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赤字決算で融資が受けにくいケース

赤字決算でも融資を受けられる可能性があることは、すでに解説しました。

ただ、融資を受けられるか否かは、「赤字の中身」によっても変わります。

これから紹介するような内容の赤字の場合、銀行で融資を受けるのは難しいでしょう。

2期以上の赤字である

同じ赤字でも、「単年の赤字」と「2期以上の赤字」では、金融機関の審査での評価が大きく変わる可能性があります。

経営に影響しない一時的な赤字や創業当初だからこその赤字という「良い赤字」ではない赤字の状態が2期連続以上で続くと、融資が中止されたり、新たな融資を受けられなかったりすることがあります。

長期的な繰越損失や債務超過がある

損益通算でも精算できないほどの損失が発生した場合に損失を翌年以降3年間まで繰り越しできる制度である「繰越損失」ですが、どのくらいの期間にわたってその状態が続いているかで評価は全く異なることがあります。

例えば、事業投資を多く行った時期に単年のみの赤字で繰越損失を利用するのは、さほど大きな問題にはなりません。

一方、長期間にわたって繰越損失の状態が続いていて、多額の赤字計上になっている場合は新たに融資を受けられない可能性が高いです。

いわゆる「悪い赤字」である

ひとくちに「赤字」といっても、良い赤字と悪い赤字があります。良い赤字であればあまり気にする必要はなく、銀行から融資を受けられる可能性もありますが、悪い赤字は早急に改善が必要です。

悪い赤字であると金融機関から判断されると、融資が受けられない可能性が高くなるでしょう。

あくまでも一例ですが「良い赤字」「悪い赤字」の特徴をまとめました。

【良い赤字の例】

  • 創業1年目の赤字
  • 設備投資などを積極的に行ったがゆえの赤字
  • 新たな市場開拓のための広告宣伝を行ったゆえの赤字
  • 減価償却による赤字 など
【悪い赤字の例】

  • 2期以上の連続した赤字
  • 私的流用が疑われてしまう赤字 など

赤字決算でも融資を受けられる可能性のある方法

赤字の内容によっては民間の銀行で融資を受けるのは難しいかもしれませんが、融資をしてくれる金融機関はほかにもあります。

ここでは「日本政策金融公庫」「消費者金融」なども視野に入れた場合に、赤字で融資を受けられる可能性のある制度やローンを解説します。

セーフティネット貸付

赤字が原因で民間の銀行から融資が受けられない場合でも、政府系金融機関である日本政策金融公庫なら融資してもらえる可能性があります。

日本政策金融公庫では数々の融資プランがありますが、「経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)」なら赤字でも融資を受けることが可能です。

セーフティネット貸付は、一時的に赤字に陥っているものの、中長期的に黒字化が見込める中小企業向けの融資です。

融資額は審査によって決まりますが、最高で7億円以上の融資を受けることも可能です。

ビジネスローン

ビジネスローンは、事業資金の融資を受けられるローンのことです。銀行だけでなく消費者金融が提供しているケースがあり、銀行の融資よりも柔軟な審査を受けられる可能性があります。

個人がカードローンで消費者金融からお金を借りる場合には「年収の3分の1まで」と決まりがありますが、ビジネスローンでは年収3分の1を超える融資を受けられます。

銀行や日本政策金融公庫よりも融資スピードに優れている傾向にあり、早く資金繰りを改善したい方にもおすすめです。

まとめ

赤字だからといって一概に「融資を受けられない」と決まったわけではありませんが、赤字の内容によっては銀行融資が難しいこともあります。まずは、自社の赤字が良い赤字なのか悪い赤字なのかを見極めましょう。

良い赤字でも銀行融資を受けられない場合は、日本政策金融公庫の公的融資や消費者金融のビジネスローンまで視野に入れることをおすすめします。

監修者

甲田拓也
甲田拓也 (公認会計士税理士甲田拓也事務所 代表)
早稲田大学卒業後、PwCグローバルファームや個人会計事務所を経て現事務所を設立。節税、資金繰り、IPO・マーケ支援を行うプロ会計士として活動。YouTubeでも情報発信中!
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