電子帳簿保存法の要件とは?
, お役立ちコラム
ウィズコロナの中、可能な限りテレワークで仕事を完結させたいけれど、領収書の提出や確認のために出社せざるを得ないという方も少なくないでしょう。また社内でのソーシャルディスタンスを確保したいけど、書類保管スペースを考えると限界があるという企業様も少なくありません。
そこで今回はこれらの課題を解決できる可能性を秘めた「帳簿の電子保存」について、どうすれば電子帳簿保存法で定めた要件に従って電子保存ができるのかをテーマにお話しさせていただきます。
電子帳簿保存法とは?効果は?
電子帳簿保存法は、原則的に会計・税務に関するすべての書類を対象に、真実性・可視性を確保できる要件の下で、スキャナ等を利用して作成された電磁的記録による保存を認めるというものです。これまで3度にわたる法改正が行われた結果運用しやすくなり、領収書等を正しく電子保存すれば原本は破棄することができます。電子帳簿保存法にしたがった保存を推進することで、次のような効果が得られます。
・出社機会の減少によるテレワークの推進 ・速やかな領収書等の回収による紛失リスクの低減 ・書類の保管場所の削減 ・確認、承認作業の迅速化 |
では、どうすれば電子帳簿保存法が定める要件を満たすのか、書類ごとに順を追ってみていきましょう。
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国税関係帳簿(仕訳帳・総勘定元帳・補助簿など)
国税関係帳簿については、以下の要件を満たしている必要があります。
1 訂正・削除履歴の確保 | 記録の訂正・削除などを行った際に、その事実と内容が確認できること(施行規則第3条1項1号) |
2 相互関連性の確保 | 記録事項同士の関連性が相互に確認できること(同2号) |
3 関連書類等の備付け | 電子保存のシステムや事務手続きに関わる必要書類を備え付けておくこと(同3号) |
4 見読可能性の確保 | 記録内容を速やかに出力できること(同4号) |
5 検索機能の確保 | 記録の検索について、一定以上の機能を確保すること(同5号) |
これらは日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が認証を行ったソフトであれば基本的に要件を満たしますが、3番目の関連書類の「事務手続きに関わる必要書類」については別途用意する必要があります。具体的には「入出力処理などの手順」「日程及び担当部署並びに電磁的記録の保存等の手順及び担当部署」などを明らかにした書類が必要です(法令解釈通達4-11)。
ご参考URL
国税庁「電子帳簿保存法上の電子データの保存要件」https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/05.htm
JIIMA「電子帳簿ソフト法的要件認証製品一覧」https://www.jiima.or.jp/activity/certification/denshichoubo_soft/list/
法令解釈通達 【法第4条((国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等))関係】https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sonota/980528-4/02.htm
国税関係書類
決算関係書類(損益計算書・貸借対照表など)
会計ソフトや表計算ソフトで作成した決算関係書類については次の3つの要件を満たした上で所轄の税務署長の承認が得られれば電子保存が認められます(電子帳簿保存法4条2項、施行規則3条2項)。
3 関連書類等の備付け | 電子保存のシステムや事務手続きに関わる必要書類を備え付けておくこと(施行規則第3条1項3号) |
4 見読可能性の確保 | 記録内容を速やかに出力できること(同4号) |
5 検索機能の確保 | 記録の検索について、一定以上の機能を確保すること(同5号) |
重要書類(契約書・領収書など)
国税関係書類のうち重要書類(契約書、領収書、預金通帳など)については次の要件を全て満たしたうえで所轄の税務署長の承認が得られればスキャナ保存が認められます(電子帳簿保存法4条3項、施行規則3条5項)。
1 入力期間の制限 | 書類の作成・受領から速やかに入力を行うこと(施行規則第3条5項1号) |
2 システムの制限 | タイムスタンプの付与や編集履歴の5管理など、一定の機能を備えたシステムを使用すること(同2号) |
3 入力者の記録 | 記録の入力者、もしくはその監督者の情報が確認できるようにしておくこと(同3号) |
4 事務処理規程の作成・運用 | 「相互牽制」「定期的な検査」「再発防止」に関わる規程を定め、事務処理を行うこと(同4号) |
5 相互関連性の確保 | 記録事項と帳簿の関連性が相互に確認できること(同5号) |
6 見読可能性の確保 | 記録内容を速やかに出力できること(同6号) |
7 関連書類等の備付け | 電子保存のシステムや事務手続きに関わる必要書類を備え付けておくこと(同7号) |
8 検索機能の確保 | 記録の検索について、一定以上の機能を確保すること(同7号) |
多くの要件が設けられていますが、これらについてもJIIMAが認証を行ったスキャナ保存ソフトであれば要件のうちかなりの部分はカバーできます。しかしながら1番目と4番目については各社独自にルールと業務フローを定める必要があります。スキャナ保存については国税庁がより詳細な資料を出しておりますので下記のご参考URLの方もご覧いただければと思います。
ご参考URL
JIIMA「電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証製品一覧」https://www.jiima.or.jp/activity/certification/denchouhou/software_list/
国税庁「はじめませんか、書類のスキャナ保存!」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0018004-061_02.pdf
一般書類(見積書・注文書・検収書など)
見積書、注文書、検収書といった一般書類については重要書類よりも要件が緩く、上記の重要書類の要件の1番目と4番目が求められていません。しががってJIIMAが認証を行ったスキャナ保存ソフトを利用すれば要件をカバーできます。
2 システムの制限 | タイムスタンプの付与や編集履歴の5管理など、一定の機能を備えたシステムを使用すること(施行規則第3条5項2号) |
3 入力者の記録 | 記録の入力者、もしくはその監督者の情報が確認できるようにしておくこと(同3号) |
5 相互関連性の確保 | 記録事項と帳簿の関連性が相互に確認できること(同5号) |
6 見読可能性の確保 | 記録内容を速やかに出力できること(同6号) |
7 関連書類等の備付け | 電子保存のシステムや事務手続きに関わる必要書類を備え付けておくこと(同7号) |
8 検索機能の確保 | 記録の検索について、一定以上の機能を確保すること(同7号) |
必要書類の備付け | 「事務の手続を明らかにした書類」を作成し、備え付けておくこと(施行規則第3条6項) |
「事務の手続を明らかにした書類」とは、保存に関わる責任者、作業の過程、順序及び入力方法などの手続を明確に表現したものをいいます。
ご参考URL
電子帳簿保存法Q&A【問43】https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07scan/02.htm#a043
電子取引の取引情報(メールでやりとりした書類)
メールでやりとりした書類についての要件は下記の通りで、電子保存のシステムや事務手続きに関わる必要書類も必要ありません。
4 見読可能性の確保 | 記録内容を速やかに出力できること(施行規則第3条1項4号) |
5 検索機能の確保 | 記録の検索について、一定以上の機能を確保すること(同5号) |
不正防止の措置 | タイムスタンプの利用や、事務処理規程の作成などといった措置を行うこと(施行規則第8条1項) |
「不正防止の措置」としては、以下のいずれかの措置を行うよう求めています。
① 送信・受信を行った記録にタイムスタンプを付すとともに、誰が保存を行ったか確認できるようにしておくこと
② 記録の不正な訂正・削除の防止に関する規程を明文化し、それに沿って事務処理を行うこと。
さいごに
電子帳簿保存法の運用には、税務署への申請が必要です。申請に必要な書類と申請期限は次の通りです。(※詳細は税務署に必ずご確認ください)
◆申請に必要な書類
① 承認申請書
② 添付書類(システムの概要・操作説明書等・電子計算機処理に関する事務手続の概要等)
◆申請期限
保存を開始する日の3か月前の日
例えば、1月1日から適用を受けるためには、前年9月30日までに承認申請書を提出する必要があります。つまり2021年の年初から適用を受ける場合には、今月中に承認申請書を提出しなければなりません。
電子保存に対応したソフトの中には、OCR機能で領収書自動読み取りが可能であったり、スマホで簡単に領収書の添付・申請が可能であったり、画面上で領収書内容の確認ができたりと、わざわざ会社に出向くことなく完結する場面も増えそうです。テレワークの推進と業務の効率化のためにも、この機会に帳簿の電子保存に舵をきられてはいかがでしょうか?
※今回のブログの内容は2020年9月時点の法令に基づいています。
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