修繕費にできる条件とは?経費にならない資本的支出との判断基準を解説

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修繕費にできる条件とは?経費にならない資本的支出との判断基準を解説

法人を運営していくうえで欠かすことができない「事務所」や「パソコン」などの固定資産について、新しいものに買い換えるばかりではなく、古くなって調子が悪くなった際は修理して使うことも多いでしょう。

修繕にかかる費用は「修繕費」として計上が可能です。ただ、修繕した内容次第では、修繕費として経費にできるか、できないかが変わることがあります。

本記事では修繕費の概要や消耗品費との違い、経費にできない「資本的支出」との判断基準について解説します。

修繕費は資産の原状回復・維持のための修理をすると適用される

修繕費は、会社が経営に必要とする「有形固定資産」について、修理や改修をする際に支払った費用のことです。

通常の経営に必要な機能の維持や、原状回復費用も含まれます。固定資産の修繕のほか、部品交換や維持費も対象です。

具体例を出すと、「パソコンがこわれて修理に出した」というのが分かりやすいでしょう。

古くなった事務所をリフォームしたり、水道の出が悪くなって修理したりした場合に、修理のために支払ったような費用も、勘定科目では「修繕費」として計上できます。

単なる動作不良に対し、修理やメンテナンスなどをして原状回復しただけならば、全額が「修繕費」として損金と認められます。

修繕費と消耗品費の違い

修繕費と同じような勘定科目に「消耗品費」があります。

消耗品費は、新たに消耗品を購入した場合に使う勘定科目です。数万円前後の机やパソコンなど、耐用年数が1年未満で取得価額が10万円未満の備品などが該当します。

10万円未満で短期間に消耗する物品は、消耗品費として経理処理をおこないます。

例えば、以下のようなケースが消耗品費に該当します。

蛍光灯が消えたため、替えの電球を購入して交換した

印刷用のA4用紙がなくなったので、買い出しに行ってきた

営業車のガソリンが少なくなってきたため、近くのガソリンスタンドで給油した

一方の修繕費は、原状回復のためのサービスが伴ったかどうかで判断します。

例えば、以下のような例だと修繕費に該当します。

プリンタからA4用紙が排出されなくなり、原因が分からず修理に出した

電球を交換しても電気がつかないため、業者に修理やメンテナンスを依頼した

実務上は、消耗品費でも修繕費でも、どちらに計上しても大きな問題はありません。

最終的には事業主判断ですが、「今回は消耗品費で、次は違う勘定科目にする」というのは、経理の継続性の観点からおすすめできません。

社内で一定の基準を設け、同じ勘定科目で継続して処理していくことが大切になります。

個人事業主は修繕費を経費にできるか

修繕費を経費として計上できるのは法人だけではなく、個人事業主も同様です。事業を営むうえで必要な修繕費については、経費に計上することができます。

ただし、個人事業主が経費として計上するには確定申告が必要です。

白色申告では収支内訳書

青色申告では青色申告決算書

上記の書類のそれぞれの欄に記載することで必要経費にできます。

修繕費は「資本的支出」として資産と判定される場合もある

事業に使う資産の維持費や修理のための支出は修繕費として経費計上が可能です。

ただし、一定の要件に当てはまる場合、「資本的支出」として資産扱いになることもあるため注意が必要です。

資本的支出は、壊れたり調子が悪くなったりした資産について、原状回復だけでなく、改良して新しい価値を加えたり、長く使えるように改良したりした場合に適用されます。

資本的支出に該当した場合は支払った年に全額を経費にすることができず、固定資産のように減価償却資産として減価償却をしていく必要があります。

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修繕費と資本的支出の判断基準

資産を修繕するとき、単に修繕をして原状回復するだけでなく、修理と改良が同時に行われるようなケースもあります。

修繕と改良が同時に行われた場合、修繕にあたる部分は修繕費、それ以外が資本的支出になりますが、明確に区分できないことも少なくありません。

上記のようなケースで「修繕費」「資本的支出」のどちらに当たるのかを判定する基準が、国税庁では公表されています。

出典:国税庁|No.5402 修繕費とならないものの判定

ここからは、国税庁で公表されている判定基準をもとに、修繕費と資本的支出の判断基準や条件について紹介します。

1.修繕費としての基準を満たす条件

修繕費として認められるのは、本記事で紹介してきた通り、資産の維持管理や原状復帰などに使われる費用に限ります。

ただ、それだけですべてを判断することは難しく、国税庁によれば以下のような少額の支出や、短期間での周期に支出されるものは修繕費に該当します。

・1つの修理や改良などの金額が「20万円未満」である

・おおむね3年以内の期間を周期として行われることが実績その他の事情からみて明らかである修理・改良などである

2.資本的支出に該当する場合

以下のように、修繕というよりも、これまでの機能にプラスするような改良をした場合は資本的支出に該当します。

用途変更のための模様替えなど、改装や改良の費用

建物の外に非常階段をつけるなど、物理的に付け加えた改良の費用

機械の部品などを品質や性能の高いものに取り替えた場合、その取り替えの金額のうち通常の取り替えに要する金額を超える部分

3.資本的支出と修繕費の区分がわからない場合

1つの修理や改善が、修繕費なのか、資本的支出なのか、判断がつかない可能性もあります。

両者のいずれに該当するか明らかでないときは、以下の基準で区分をおこなうことができます。

【修繕費なのか資本的支出か明らかでないものについて】

60万円未満の部分⇒支出額を修繕費として計上できる

支出した金額が固定資産の前事業年度終了時点の取得価額のおおむね10パーセント相当額以下である⇒支出額を修繕費として計上できる

例えば前期末の取得価額1,000万円の建物の修繕費用として80万円を支払った場合。「60万円未満」という条件はクリアできていません。

一方、「前事業年度終了時点の取得価額のおおむね10パーセント相当額」である100万円は下回っています。

上記の場合であれば、全額を修繕費として計上することが可能です。

また、修繕費と資本的支出の部分がどこまでか明らかでなく、これまで紹介した判定要件も満たしていない場合は、支出額の30%と前期末取得価額の10%のうち、いずれか少ない方を修繕費とすることができます。

つまり、修繕と資本的支出の区別が全くできないときには、「毎年継続して同じ処理を適用する」などを要件に、3割を修繕費として計上することができます。

例えば前期末の取得価額1,000万円の建物の修理に200万円を支払った場合。「60万円未満」「前事業年度終了時点の取得価額のおおむね10パーセント相当額以下」のいずれにも該当しないことから、今回の判定を利用します。

支出額200万円の30%である60万円と前期末の取得価額1,000万円の10%にあたる10%を比較し、少ないほうの「60万円」まで経費に計上できます。

災害によって固定資産に被害が出た場合は判断基準が異なる

台風や地震などの災害で被害を受けた固定資産(被災資産)について、通常とは修繕費や資本的支出の判断が異なる場合があります。

まず、被災資産を原状回復するために支出した金額は修繕費に該当します。また、被災資産の被災前の状態を維持するための補強工事や排水・土砂崩れの防止の支出は、法人が修繕費として経理をおこなっている場合はその処理が認められます。

また、上記に該当しないケースで修繕費か資本的支出かが明らかでないものがある場合。法人が当該金額の30%相当額を修繕費として残額を資本的支出とする経理を行っているときは、処理が認められます。

まとめ

会社の有形固定資産や備品が壊れた場合など、修理や改修のために支払った費用は修繕費として計上できるため、節税につなげることができます。

しかし、いつでも全額を修繕費に適用できるわけではなく、資産の使用期間の延長、資産の価値を増加させるための支出に関しては「資本的支出」として資産扱いになる可能性もあります。

実際に資産を修繕してみると、修繕費にあたるか資本的支出にあたるか、判断がつかないことも多いです。経理処理の際に困らないよう、本記事で紹介した基準を把握しておきましょう。

監修者

甲田拓也
甲田拓也 (公認会計士税理士甲田拓也事務所 代表)
早稲田大学卒業後、PwCグローバルファームや個人会計事務所を経て現事務所を設立。節税、資金繰り、IPO・マーケ支援を行うプロ会計士として活動。YouTubeでも情報発信中!
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