創業融資制度とは?開業時に利用できる融資制度の特徴や利用時の注意点を解説
起業や開業をするとき、会社の経営者や個人事業主が最初に直面する問題が、資金調達の手段です。
お金を借りる方法にはさまざまなものがありますが、新規創業時は事業の運営実績や返済実績がないことから融資してもらいにくいことが多くあります。
そこで検討したいのが「創業融資制度」への申し込みです。初めて事業を起こす方向けの制度なので、返済実績や経営実績が乏しい事業者でも融資を受けられる可能性があります。
本記事では創業融資制度の概要と、金融機関ごとの創業融資制度の特徴、借りるときの注意点について解説します。
創業融資とは?起業や開業のときに事業者が受けられる融資のこと
創業融資制度とは、事業主が新たにビジネスを始める際に利用できる融資のことです。
創業した直後は売り上げを得るのに必要な備品を買いそろえたり、店舗の賃料を支払ったりと、何かとお金が必要になります。
ただ、事業を回している実績や返済の実績がない創業段階では、民間の金融機関の融資を受けにくいです。
創業融資はビジネスを始めたばかりの人を対象にしており、実績が乏しくても融資を受けられる可能性があります。
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創業融資の種類
創業融資にはさまざまな種類がありますが、今回は以下の3つの融資に絞って紹介していきます。
・日本政策金融公庫の創業融資
・地方自治体の制度融資
・民間金融機関の保証付融資
日本政策金融公庫の創業融資
日本政策金融公庫は、資金調達が困難なことが多い中小企業や小規模事業者に対して、融資や信用保険などの融資を行う組織です。
財務省管轄の政府系金融機関であり、民間の金融機関に比べて「創業当初でも融資が通りやすい」「金利が低い」「保証人不要で借りられる」などのメリットがあります。
日本政策金融公庫が小規模事業者向けに提供している融資のなかで、以下の2つを見てみましょう。
新規開業資金
新規開業資金は、新しく事業を始める方、または事業開始後概ね7年以内の方を対象にした融資制度です。
融資を受けた資金は事業の開始前後の運転資金として利用できます。融資限度額は7,200万円(うち運転資金は4,800万円)と高額で、自己資金の要件はありません。
返済期間は設備資金で20年以内、運転資金が10年以内と長期の設定なので、毎月の返済額を抑えつつ安定した返済が可能です。
また据置期間として運転資金の元本の返済を5年、設備資金の元本の返済を5年までそれぞれ延長することもできます。
ただし、誰でも申し込めるわけではなく、融資を受けられるのは「新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方」に限られます。
新規開業資金(中小企業経営力強化関連)
中小企業経営力強化関連の新規開業資金は、以下の2つの条件に当てはまる方が融資対象になる制度です。中小会計を適用する方の創業を支援することを目的としています。
1.新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方のうち、「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用しているまたは適用する予定の方
2.自ら事業計画書の策定を行い、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている方 |
融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で開業資金や開業後の運転資金として利用できます。
地方自治体の制度融資
制度融資とは、都道府県などの地方自治体で融資を受けられる創業融資です。
地方自治体・金融機関・信用保証協会の3者が連携したうえで融資しており、利用できる制度は都道府県や市区町村など提供元の自治体によってその内容が大きく異なります。
中小企業の事業者などが融資を受けやすくすることが目的の制度であり、民間の金融機関のプロパー融資と比較して審査のハードルが低い傾向にあるといわれています。
制度融資を利用すると信用保証協会を利用するための「保証料」がかかりますが、自治体によっては保証料や利息の援助を受けられる可能性もあります。
また、自治体の制度次第では、創業アドバイザーによる公的なサポートを受けることも可能です。
民間金融機関の信用保証協会の保証付融資
創業融資制度といえば日本政策金融公庫の融資や都道府県・市区町村の制度融資が選択肢として挙げられますが、民間の金融機関でも融資を受けることも可能です。
民間の金融機関の融資には、信用保証協会の保証が付く「保証付融資」と、信用保証協会の保証がなく銀行がリスクを負う「プロパー融資」の2種類があります。
創業時にプロパー融資を受けられないとしても、銀行から見て貸し倒れリスクを防止できる保証付融資であれば、審査を通過できる可能性もあるでしょう。
創業融資に申し込む際の注意点
創業融資を利用することで、開業・起業間もない事業主でも融資してもらえる可能性がありますが、一方で気を付けるべき注意点もいくつかあります。
ここでは、創業融資に申し込む際の注意点として、以下の4つを紹介します。
自己資金が少ないと、希望している金額の融資を受けられないことがある
創業融資のなかには自己資金の要件が設定されていない融資もありますが、自己資金の要件が定義されていないとしても、自己資金が金融機関の基準より少ないと希望する金額の融資を受けられない可能性もあります。
日本政策金融公庫が公表している2023年度新規開業実態調査によると、開業時の自己資金の平均は約280万円です。
一般的に、日本政策金融公庫で融資を受けやすい融資額は、自己資金の3~4倍といわれています。
希望する融資額に合わせ、可能な限り自己資金を準備しましょう。
審査を通過できないと融資を受けることはできない
日本政策金融公庫でも、地方自治体でも金融機関でも、創業融資を受けるにあたっては審査を受ける必要があります。
日本政策金融公庫も地方自治体でもボランティアではなく、返済能力や信用が認められないと審査を通過できません。
以下の条件に該当してしまうと審査落ちになってしまう可能性があるので注意が必要です。
・事業計画書に魅力がない、計画性がない
・過去の支払いや返済に延滞の実績が残る
創業融資の審査では、申込者が提出する事業計画書の内容が合否に影響することがあります。曖昧な点や矛盾点がある計画では審査を通過できないため、説得力のある事業計画書になるように何度も見直しましょう。
また、過去の支払いや返済を延滞したことがあり、信用情報に延滞の事故情報が残っていると返済能力がないと判断されて審査に落ちる可能性が高まります。
事故情報は掲載から5~7年で削除されますが、創業のタイミングが遅れるのは避けたいもの。普段から、事故情報が残らないように支払いや返済の期限を守りましょう。
まとめ
創業融資制度は一般的な民間金融機関のローンと異なり、初めて起業や開業をする事業者が融資を受けやすい特徴があります。日本政策金融公庫の融資だけでなく、地方自治体の制度融資や民間の金融機関の保証融資などの制度もあります。
個人事業主の開業や法人の設立にあたって資金を集めたい方は、それぞれの制度の特徴や注意点を把握して、状況に合った融資に申し込みましょう。
監修者
甲田拓也 (公認会計士税理士甲田拓也事務所 代表)
早稲田大学卒業後、PwCグローバルファームや個人会計事務所を経て現事務所を設立。節税、資金繰り、IPO・マーケ支援を行うプロ会計士として活動。YouTubeでも情報発信中! |
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